内容説明
エホバの予言は実現されたのか。ヨナはにせの予言者にすぎなかったのか。旧約聖書の「ヨナ記」をもとに、世界の終わりの前の人間を美しい文章で描く、丸谷才一の記念碑的長編第一作。
著者等紹介
丸谷才一[マルヤサイイチ]
1925年、山形県生まれ。東京大学文学部英文科卒。作家、翻訳家、エッセイスト、文芸評論家。主な小説に、『年の残り』(芥川賞)、『たった一人の反乱』(谷崎潤一郎賞)、『樹影譚』(川端康成文学賞)、『輝く日の宮』(泉鏡花文学賞)など、主な翻訳に、ジェイムズ・ジョイス『若い芸術家の肖像』(読売文学賞)など、主な評論に『忠臣蔵とは何か』(野間文芸賞)などがある。文化勲章受章。2012年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かつみす
9
旧約聖書に材を採り、1959年に擱筆された最初の長編小説。平凡な靴職人のヨナはエホバの命を受け、世界の終わりを説くためにニネベへと赴く。自分が真の予言者であるのかどうか確信がもてず揺れ動くヨナの胸の内が、重厚で艶のある文章で描き出されていく。やがて彼は、絶対者であるエホバが強制する掟や倫理とは違うところに人が生きる意味があると説く娼婦ラメテと出会う・・・。終章の驚くべき語りもそうだけれど、とにかくこの人は最初から完成された表現力を持っていたことがよく分かる。読後にずしりと重いものを感じる、知られざる名作。2017/07/17
hirayama46
6
丸谷才一の第一長編。エッセイでの軽妙洒脱さとは一味違う、解説の松浦寿輝の表現を借りるなら「重厚な心理小説」となっております。悩みに悩んで振り絞った書いたような筆致が印象的です。2021/01/14
go
5
丸谷才一の長編第一作。同人誌に発表したらしいが、もう完成されていて、とにかくこんな新人が出てきたらヤバい。この8年後に芥川賞を取るのだが、おかしな感じに見えてしまう。丸谷才一の読みやすいリズムを持った美しい文章が好きなのだが、それはこの第一作でも堪能出来る。さて次は笹まくらを読もう。2024/02/11
chiem
3
タイトルと装丁で手に取った、いわゆる「ジャケ買い」だったが、この巡り合わせに感動。「信仰」という以前に「信じる」とは何なのか、何を信じて何を疑っているのか、これはヨナの話なのか、それとも自分のことではないのか。居心地はすこぶる悪いが、引き込まれるのが気持ち良い世界だった。2013/12/02
星菫
3
主要人物3人の、それぞれの心の陰翳に、胸が押し潰されそうになった。ストーリーの緊迫感も凄い!あの丸谷才一氏がこういう小説を書いていたことにちょっと驚いた。2013/05/31