内容説明
絵が言葉をさそい、言葉が絵をつれてくる―。儚いものと強いもの。消えゆくものと残るもの。古川日出男の4つの短篇と黒田潔の繊細なイラストがまったく新しい形で共鳴しあう、ビジュアルストーリーブック。
著者等紹介
古川日出男[フルカワヒデオ]
作家。1966年、福島県生まれ。98年、日本人少年のアフリカ大陸での色彩探求譚『13』でデビュー。2002年『アラビアの夜の種族』で日本推理作家協会賞と日本SF大賞をダブル受賞。06年『LOVE』で三島由紀夫賞を受賞
黒田潔[クロダキヨシ]
イラストレーター/アートディレクター。1975年、東京都生まれ。2003年より広告や雑誌、書籍のアートワークを手掛け、東京都現代美術館での「MOTアニュアル10」、韓国のナム・ジュン・パイクアートセンターでの展覧会等、国内外で活躍する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さっとる◎
35
古川日出男の短編4つ。と黒田潔の絵、を写した写真の素敵本。発表順とは逆の並び。完成としての「舗装道路」、完成した「絵」、終わりとして完成でもある「4話目」。そこから、戻る。戻る?戻ったら過去があるはずなのに。なのにそこには未来もあるのだ。1日は1日なのに、永遠でもあって。蘊蓄でどうこうするのではなく、それを物語の中に閉じ込める手腕が本当にいい。夜だから光が足りない、それを「月光が足りずに、流れ出ている血には、赤、という色彩がない」こういう文章で表すその感覚もいい。古川日出男の文章がやっぱり好きなんだな私。2017/07/29
深夜
19
人間は皆、思い思いに生きているように見えて、舗装された綺麗な道から逸れないよう、同調圧力に流されて生きていくのだ。動物を見ればそんなことはない。そりゃあ、群れだって歩く動物もいるけれど、ひとたび何かに気を取られれば、心ゆくままにそちらに歩を進めるだろう。前進することに、恐れなどないのだ。2018/02/26
眠る山猫屋
17
ちょっと難しいのに、古川日出男の文体は好きだ。いちいちカッコいいし、リズムが合う、なんだか揺さぶられる。死後のような舗装道路の世界を歩く人々、ダムを神だと思う鰐の化身の少女の砂漠の旅、πという記号に魅せられた存在の解放、Q なる者の転生と変遷・・・。いや、感想なんて語れない摩訶不思議な連作(?)。2016/10/28
ハルト
7
時間を逆行することで過去は未来へと接続し前進すべき道は消える。死は過去にも未来にも現在にもあまた接続している。人はどこに向かおうとしているのか。物語の不死性の時間のなかで人はなにを見るのか。古川氏の小説と黒田氏のイラスト。そのふたつはなにによって接続されているのか。まなざし?バラバラされた世界が他のものと組合わさることで新たな世界が生まれる。イラストは、目のイラストが妖しく艶かしくぞっとエロティックでとくに好きでした。2013/01/22
ぶうたん
6
本書については美しい造本。まずはそこが挙げられる。そこに添えられた文章は、初期の作品とは異なり、物語性を相当量削ぎ落とした散文詩のような短篇である。キーワードはあるものの、イメージ先行でストーリー性は希薄なので、言葉そのものを楽しまないと本書を楽しむことは難しいのでは無いかと思われる。自分にはまだまだ楽しみ方がわかっていないようだ。2024/11/24
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