著者等紹介
小川洋子[オガワヨウコ]
1962年、岡山県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸専攻卒業。88年、「揚羽蝶が壊れる時」で第7回海燕新人文学賞を受賞し、デビュー。91年、「妊娠カレンダー」で第104回芥川賞を受賞。2004年、『博士の愛した数式』で第55回読売文学賞、第1回本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で第32回泉鏡花文学賞、2006年、『ミーナの行進』で第42回谷崎潤一郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
80
小学生の頃に、みんなが切手やシールをコレクションしていた時に、小川洋子さんは密かに爪とかさぶたを蒐集していたそうだ。相当に奇妙なコレクションだと言わねばならないだろう。流石と言えば流石。あるいは、変態的と言えば変態的だ。そんな作家の偏愛アンソロジー。全部で16の短篇を収録する。小川洋子さん自身の書く小説はこよなく好きなのだが、こうして選ばれた作品はどうも今一つピンとこない。他では選ばれないものを、あえて選んでいるからだろうか。集中では、初めて読む内田百閒と金井美恵子が拾いものであったかと思う。2012/12/28
風眠
69
大好きな小川洋子さんがセレクトした短篇なら、きっと私も好きだろうと思って手に取った。既読のもの未読のもの、思った通り、私も好きだった。ひとつひとつの短篇の後の小川さんの感想がまた素敵で、私と違う感想だったり、同じような感想もあったり、そういうことも何だか嬉しい本だった。『偏愛短篇箱』というネーミングも、この本にぴったりだと思う。金井恵美子『兎』、森茉莉『二人の天使』、牧野信一『風媒結婚』が特に好き。グロテスクで歪だけれど、少し切なくて哀しくて、どこか凛とした美しい物語。尾崎翠はほかの作品も読んでみたい。2014/04/26
ちょろこ
53
小川さんの宝箱をそっと見せていただいたような一冊。見せていただきます、と手を合わせてから本を開き、最後はどうもありがとうございました、とお辞儀して本を閉じたような、そんな読後感。しかもその宝箱は一度にのぞき込むのはかなり危険。なぜなら小川さんの紡ぎだす世界のもととなるであろう、あまりにも偏りすぎた異世界に溺れてしまいそうだったから。異世界作品と小川さんの解説、エッセイのセットは毎日一編ずつがちょうど良かった。数ある宝物の中でもやっぱり乱歩の「押絵と旅する男」が断トツ好みだった。2016/03/02
かさお
35
他人にどう思われても構わない。好きは好きなの。ガラクタにしか見えなくたって、私の大切な宝物。そっと小箱に入れよう。小川洋子がそんな気持ちで選んだ短編16編。彼女が選んだというだけで興味津々。1番の収穫は田辺聖子。こんなにねっとりとした捉えどころのない作品を書く人だったのか。他のも読んでみたい。次は金井美恵子の「兎」恐ろしい、三浦哲郎の「みのむし」哀しい、そしてゾワゾワ1位は吉田知子の「お供え」今で言うと今村夏子風。半分以上知らない作家さんで新鮮だった。小川さんの解説が全てに付いてるのがこれ又良かった。2024/03/16
八百
35
もちろん行ったことなどないが京都の高級料亭菊乃井さん辺りで懐石料理をいただいたとしたらたぶんこんな満足感なんだろうなと思わせる珠玉の短編集。そして貧しい舌の一見の客人にも板長小川洋子さん自ら一つひとつの料理を解説してくれる演出もなんとも心憎い。名前は知っていてもはたと向きあったことのない重厚な作家陣なのであるがその演出があるが故スルリと至高の世界に入り込むことが出来るのだ。改めて川端康成や宮本輝を深く読んでみたいと思ったし尾崎翠や金井美恵子の文才には鳥肌が立った。この偏愛短篇箱は私にとっては宝石箱である2014/08/10