出版社内容情報
高温多湿な気候は豊かな木材資源を育む一方、建築の永続にとっては過酷な条件を課す。東南アジアの建築遺産といえば多くの人は、石造や煉瓦造の壮大なモニュメントや個性豊かな民家を思い浮かべるかもしれないが、古代以来、寺院や宮殿まで圧倒的多数の建造物は木造であった。大陸部の各国をフィールドに失われた建築の解明と失われつつある建築の保存に取り組む第一線の専門家達による、古建築はもとより、考古発掘や歴史資料などあらゆる情報源を駆使した調査研究の最新成果を集大成した、初の一篇。
目次
序文 本書作成の背景、アジアにおける木造建築文化の地域性と普遍性
1 古代木造建築を「考古学」から考える(考古学的および建築学的知見から見たチャンパの古代木造建築;広域アンコールの居住パターンと考古遺構:民居から王宮まで;アンコール・トム王宮の木製遺物と建築遺構;バガンの木造王宮の11世紀から今日まで)
2 古代木造建築を「建築史学」から考える(考古学的知見から見た北部ベトナムの古代木造建築;スコータイとピッサヌロークの古代木造建築;カンボジアとミャンマーにおける木造建築の伝統と発展過程に関する比較検討;タイにおける木造建築技術の発展および周辺地域との相互影響)
3 木造建築を「保存」する(タイにおける木造建築遺産の保存修理;ラオス・ルアンパバーンにおける木造建築遺産の保存修理;国際的視点から見た東南アジア木造建築遺産保存修理の現状と課題)
総論 東南アジアにおける木造建築史研究と木造建築遺産保護をめぐる課題