感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kthyk
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「都市は言語とともに、いまでも人間のもっとも偉大な芸術作品」と始まる50年前の名著。再読し、その批判・批評に身震いさせられた。戦後リューベックに戻り市の創立記念式典でトマス・マンは語る。「都市が美術と秩序の象徴であるのをやめた時、都市は否定的な仕方で行動し、解体の事実の蔓延を表現する」。村落を都市の積極的な制度に変えたもの、それは人口や経済の拡大ではなく、人間の交流・交歓拡大への要求。人口増加や通商路の拡大という経済的視点ではない。しかし、今や、集団的な芸術と技術の総合としての市民優先の都市は消え去った。2021/08/31
毒モナカジャンボ
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尋常ではない博識と身体を使った実地調査によって生まれた1930年代に書かれたとは思えない本。中世の小規模ながら有機的に結合した諸共同体がバロック期の戦争文化によって統一(それは排他性を持つ)とその過剰さを増していく。鉄-石炭文明こと旧技術期には都市より田舎の方があらゆる点でマシという悲惨な状況が生まれ始め、メガロポリスの出現によってその破滅は極まる。そこに対置されるのは地域主義だが、理想的普遍的な共同意志に基づく多様性と統一性の幸福な結婚は可能なのか。現代のグローバル・シティの超過密はここで問われていた。2021/03/08