内容説明
フランス革命によって破壊されたフランスの主要な建造物を修復し、歴史的建造物の保存・再生に新しい理論と方法を打ち出した、19世紀フランスの修復建築家ヴィオレ・ル・デュクの生涯と仕事を紹介。彼の修復理論と方法を実施事例を通して述べる。
目次
1 犯罪的修復者ヴィオレ・ル・デュク
2 修復建築家への道
3 歴史的構造の再構築
4 合理主義建築の理想と現実
5 建築論
6 ヴィオレ・ル・デュクの現代的意義
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鵐窟庵
2
ヴィオレ=ル=デュクはボザールへの入学を拒否して1810年に崩壊危機にあったラ・マドレーヌ聖堂の修復作業から経歴が始まる。当時構造計算が無くして適切な構造補強を用いて修復を行った。修復作業の経験を通じて彼が見出したのは演繹的な構造原理であり、それは近代建築の合理主義の嚆矢といえる。一方、彼の修復作業は歴史的な懐古趣味や古典建築の要素を規範とする当時の社会・建築界では疎んじられた。しかし歴史構法の解明や近代建築の先駆者としてのデュクの建築修復や『建築講話』の理論は重要であり、今日的な意義も高まっている。2019/01/05
ik
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修復家としては悪名を轟かせているヴィオレ・ル・デュクの歴史的位置づけを概観しながら、その仕事を再評価する。また、そのことを通してオリジナル偏重の現代の修復観、また都市景観など更に広範囲に渡る文化財保護のあり方を問う。近代を見直すことで現代の価値観も考え直せるのが大変面白い。私はやはり建築も芸術も使われてこそだと思うところがあるので、彼の修復業を見直す本書には非常に興味が持てた。偉大な改築家であったミケランジェロの仕事と比較してみてもまた面白いかもしれない。2013/07/01