出版社内容情報
日本の代表的歌人の秀歌を堪能するアンソロジー「コレクション歌人選」(4期・全20冊)二十世紀を力強く
生き抜い…塚本邦雄、山中智恵子、前登志夫ら秀才を輩出し、精神の丈高さによる象徴表現を生涯追求し続けた歌人。
楠見 朋?[クスミ トモヒコ]
著・文・その他
内容説明
塚本邦雄、山中智恵子、前登志夫ら俊才を輩出し、精神の丈高さによる象徴表現を生涯追求し続けた歌人。
目次
やまやまをめぐらして大和国内の雪の白きをさびしみ生くる
かなしみを締めあげることに人間のちからを尽して夜もねむれず
何んといふ深いつぶやきをもらしをる闇の夜の底の大寺院なり
顔やからだにレモンの露をぬたくつてすつぱりとした夏の朝なり
一傘の樹陰にわがねるまつぴるま野の蝶群れて奇しき夢を舞ふ
いますぐに君はこの街に放火せよその焔の何んとうつくしからむ
野にかへり野に爬虫類をやしなふはつひに復讐にそなへむがため
植物はいよいよ白くなりはててもはや百年野にひとを見ず
うまれた日は野も山もふかい霞にて母のすがたが見られなかつた
道道に宝石の眼がかくれゐて朝ゆふにわれの足きよくせり〔ほか〕
著者等紹介
楠見朋彦[クスミトモヒコ]
歌人、作家。1972年大阪府生まれ。2011~2018年まで神戸新聞文芸小説欄選者を務める。1999年『零歳の詩人』(集英社)ですばる文学賞。2010年『塚本邦雄の青春』(ウェッジ文庫)で前川佐美雄賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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すずき
5
春がすみいよよ濃くなる真昼間のなにも見えねば大和と思へ、の世界とモダニズム短歌の時代がイマイチ結びついていなかったのが、とりあえず通覧できる本が新しく出たのはよかった。しかし個人的には「日本歌人」からの弟子筋の広がりとかについても知りたかった。同シリーズの葛原妙子/評:川野里子に比べると…うーん、口語訳も要らない。ニュートラルに読めば良いというものでもないが著者の読みは他の方も言っているように些か俗っぽい2020/03/15
ハルト
4
読了:◎ どこかするりと心に入ってくるような心持ちになる。心を鷲掴みにされるというような感じではなく、そっと傍にいてくれるような、そんな感じがした。歌自体はよかったけれど、訳がちょっと私感が強すぎてげんなりとした気分になってしまった。個人的にこれなら訳はなくてもよかったかも。2020/09/04
gorgeanalogue
3
なんだかとらえどころのない歌人だと思っていたくらいで、とにかく俯瞰できる一冊が出たのはよかった。しかし解説・楠見朋彦の読みは、俗っぽくて、前川の魅力を取り逃がしている気味が強い。多くの歌碑建立への批判は興味深かったけれど。楠見氏の選ではメインの歌にはなっていないが、自分で本書から一首というと「みづからを省みるなく秋に入りぬすでに洪水は三たび四たびせり」2018/11/21
denden
2
コレクション日本歌人選の中の1冊120Pほどの殆ど小冊子に近い薄い本に47首の短歌を選び、尚且つその歌人の人生を語ろうという無謀にも近い1冊。各章ごとに1首の短歌、その解説から歌人の生活、動向、その後等々そんなの無理だろう?と思いっきり詰め込んである。勢い、それを受け取った読者は目いっぱいの宿題を投げつけられて右往左往し、結果として何の本だったか忘れてしまう。短歌を味わいたいご仁には超絶お勧めしない。宿題が多すぎて頭が破裂するからだ。2024/11/22