出版社内容情報
国学者でありながら歌人として生涯新しい表現を模索していた信綱の歌を、ひ孫が読み解く。
内容説明
国学者でありながら、歌人として生涯新しい表現を模索していた信綱の歌を、曾孫が読み解く。
目次
願はくはわれ春風に身をなして憂ある人の門をとはばや
鳥の声水のひびきに夜はあけて神代に似たり山中の村
幼きは幼きどちのものがたり葡萄のかげに月かたぶきぬ
ゑひにけりわれゑひにけり真心もこもれる酒にわれ酔ひにけり
大門のいしずゑ苔にうづもれて七堂伽藍ただ秋の風
やま百合の幾千の花を折りあつめあつめし中に一夜寝てしが
ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲
手とりかはし笑みてら談らなこの国の遠つ聖に多く学びき
小羊がせなかまろめてねむりをる門の日あたりに履ぬふ少女
見おろせば金陵百里風さむし誰またここに都建つべき〔ほか〕
著者等紹介
佐佐木頼綱[ササキヨリツナ]
1979年東京都生まれ。歌人。佐佐木信綱は曾祖父にあたる。2017年、第28回歌壇賞受賞。2019年度NHK短歌選者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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だいだい(橙)
18
明治5年に生まれ、太平洋戦争の終戦後までを生きた国文学者であり歌人である佐々木信綱は、おおらかで景の大きな歌を詠む歌人であった。斎藤茂吉、石河啄木と比べると知られていないのは、その時のトレンドとはやや違う歌を詠んでいたからで、本人にもその自覚はあった。その曾孫に当たる歌人、佐佐木頼綱氏がまとめた50首は、信綱が若い頃、希望に満ちて詠んだ歌から、死に臨んで詠んだ遺詠までの実に10以上の歌集に渡って選ばれている。どれも、信綱のおおらかで情にあふれた暖かい視点が感じられる。2022/02/12
ハルト
10
読了:◎ 「歌の始まりは愛づる心である」。そんな心持ちで作られた短歌はどこか柔らかく温かい。苦悩や自責があったとしても、歌われるのはやさしく前向きさが感じられる。国文学者としても大成し、「万葉集」など深い知識をも持っていた。好きだったのは、歌壇からは評価が高くなかった「思草」「新月」から採られた歌でした。2021/01/07
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