目次
大野路は繁道茂路茂くとも君し通はば道は広けむ
渋谿の二上山に鷲そ子産むといふ翳にも君がみために鷲そ子産むといふ
秋の田の穂向見がてりわが背子がふさ手折り来るをみなへしかも
をみなへし咲きたる野辺を行きめぐり君を思ひ出たもとほり来ぬ
秋の夜は暁寒し白たへの妹が衣手着むよしもがも
ほととぎす鳴きて過ぎにし岡辺から秋風吹きぬよしもあらなくに
妹が家に伊久里の森の藤の花今来む春も常かくし見む
雁がねは使ひに来むと騒くらむ秋風寒みその川の上に
馬並めていざうち行かな渋谿の清き磯廻に寄する波見に
ぬばたまの夜はふけぬらし玉くしげ二上山に月傾きぬ〔ほか〕