内容説明
『源氏物語』の出現は、驚嘆すべき新しい創造の試みであり、それは、日本の文学が遭遇した、画期的かつ最大級の文学史上の一コマであった。寓意や准拠といった観点を軸に、史書、説話、漢詩文、仏典など、様々な外部テクストを本文と対比して、作品世界に分け入り、中世的視界から『源氏物語』の内部世界を照射する。
目次
1(玄宗・楊貴妃・安禄山と桐壷帝・藤壷・光源氏の寓意;武恵妃と桐壷更衣、楊貴妃と藤壷―桐壷巻の准拠と構想;“北山のなにがし寺”再読―若紫巻をめぐって;胡旋女の寓意―紅葉賀の青海波;胡旋舞の表象―光源氏と清盛と)
2(“非在”する仏伝―光源氏物語の構造)
3(宇治八の宮再読―敦実親王准拠説とその意義;源信の母、姉、妹―“横川のなにがし僧都”をめぐって)
著者等紹介
荒木浩[アラキヒロシ]
1959年生まれ。京都大学文学部卒、同大学院文学研究科博士後期課程中退。博士(文学)。大阪大学教授などを経て、国際日本文化研究センター教授・総合研究大学院大学教授。専門分野:日本古典文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
akuragitatata
0
源氏物語についての研究書。源氏の準拠(元ネタ)についての本とひとまず言ってよいと思うが、長恨歌伝の成果から光君を安禄山に準えているという指摘や、鞍馬寺縁起から、北山について論じる点、慧眼という他なく広く中世文学の研究者も読むべき。そうした手つきのせいで記述が多く桐壺巻と宇治十帖に偏るのは仕方ないかもしれない。ただし、タイトルはわからなくもないけど、ミスリード。これだと源氏物語が作られる以前の物語を論じた本のようにみえる(そういう本ではない)2016/12/30
れじーな
0
「源氏物語」の元ネタを突き詰めていく系ではあるのですが、難しかったです。学術書? 論文? でした。もっと分かりやすい言葉で書くこともできた筈! とも思うのですが、それだと説得力がないということになるんでしょうか…。初心者には向かない、というか、興味本位で手に取るものではなかったです。源氏を仏陀になぞらえたり、「長恨歌」との関わりをより深く考察したり、興味は惹かれたんですけど。2014/09/30