目次
秋の田の穂向見がてりわが背子がふさ手折り来るをみなへしかも
をみなへし咲きたる野辺を行きめぐり君を思ひ出たもとほり来ぬ
妹が家に伊久里の森の藤の花今来む春も常かくし見む
馬並めていざうち行かな渋谿の清き磯廻に寄する波見に
かからむとかねて知りせば越の海の荒磯の波も見せましものを
春の花今は盛りににほふらむ折りてかざさむ手力もがも
玉くしげ二上山に鳴く鳥の声の恋しき時は来にけり
布勢の海の沖つ白波あり通ひいや年のはに見つつしのはむ
立山に降り置ける雪を常夏に見れども飽かず神からならし
矢形尾の鷹を手に据ゑ三島野に狩らぬ日まねく月そ経にける〔ほか〕