内容説明
鎌倉後期成立の仏教説話集『沙石集』は、一度完成した後も、無住自身による二度の大改訂と後人による改変によって、記述に差異のある伝本が多数存在している。本文の成り立ちや立ち位置もわかりないまま、論拠として使用する研究状況に警鐘を鳴らし、現存の全十一写本について、前後関係を解明し系統化する。『ささめごと』や西鶴の諸作品、『醒睡笑』にも引用され、現在ではフランス語訳、英訳もなされるなど、後世多くの読者を獲得し、日本史・宗教史・思想史等の分野にも影響を与えてきた『沙石集』を扱う際の必読書。
目次
『沙石集』伝本研究の現在
第1部 初期的段階の諸本(俊海本概観;俊海本からの改変―米沢本へ;阿岸本の考察;成簣堂本の考察)
第2部 永仁改訂前後の諸本(吉川本の考察;梵舜本の考察;内閣本の考察;長享本の考察)
第3部 徳治改訂以後の諸本(東大本の考察;神宮本の考察;岩瀬本の考察)
『沙石集』伝本研究の総括―課題と展望
著者等紹介
土屋有里子[ツチヤユリコ]
1974年東京都生まれ。1997年早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。2003年早稲田大学大学院文学研究科日本文学専攻博士課程単位取得退学。早稲田大学教育学部助手、日本学術振興会特別研究員などを経て、現在、早稲田大学非常勤講師。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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