出版社内容情報
右手は義手、ギラリと光る鋭い目つきで全身黒づくめの男は、依頼主に惚れ込んだ時だけ仕事をする。そして「絶対に中を覗くなよ」と言い残し、小屋にこもり最後のひと彫りをしたその時、目の前で起こるのは世にも不思議な現象だった。旅籠を窮地に追い込む悪党や高飛車な家老など、世の悪をおのれの「みぎて」で黙らせる時代小説。「天下一の彫り物職人、左甚五郎たぁ、俺のことだっ!」
内容説明
この男の右に出る者はいないと評される彫り物職人、左甚五郎が、世にはびこる悪党をおのれの「みぎて」で黙らせる!旨い酒や大金をちらつかせ、欲を満たすために彫刻を依頼したとて、依頼人に惚れ込まなければ容易に受けない甚五郎。だが、ひとたび彫ると決めると、「絶対に中を覗くなよ」と言い残して小屋に籠る。なまぐさ断ちをして彫った、人々が驚愕する木像に潜む秘密とは。死んだ妻の幽霊を捜すという、常人には理解できない旅の途中で、厄介事に巻き込まれながらも放っておけない天才肌の人情家。甚五郎が巻き起こす、笑いあり涙あり不思議ありの痛快時代小説ついに開幕!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
タイ子
89
名工・左甚五郎を知らない人はいないだろう。えっ!知らないって?それは大変失礼しました。有名な日光東照宮の眠り猫が私にとっては一番の有名どころ。その左甚五郎の物語を白蔵さんが書けばこうなる、どうなる?!やはり面白いの一言。甚五郎は飛騨高山の出身で亡くなった愛妻の亡霊を探して江戸に向かって旅をする。その旅の途中で人助けのために彼が魂を込めて作る彫刻。これが左甚五郎なんだ~。アニメのような世界観の中に愛や哀しみが込められていて甚五郎が好きになる。妻の亡霊とは何事ぞ?知れば切ない物語。シリーズ化されるのが嬉しい。2025/06/12
オーウェン
57
この左甚五郎が実在した記録はないが、いそうな感じはする個性がある。 彫り物職人の甚五郎だが、依頼されただけでは引き受けない。 理不尽な出来事だったりで、苦しんでいる人のために惚れこみ彫り仕事をする。 出来上がった彫像には魂が込められ動き出す。 そして甚五郎が旅を続ける原因である死んだ妻の存在。 時代劇なのに何やらホラー的な雰囲気が出ているが、このまま続巻しそうな終わり方。 各地で悪政を裁く水戸黄門みたいな存在になりそう。2025/07/30
ポチ
47
左甚五郎の彫った彫刻は動きまわると何かで読んだ事があるが、なるほどこういう事だったのか。あの死んだ奥さんにはまた会えるのかなぁ。気になる(笑)とても楽しい作品でした。(少しうるうるあり)2025/07/02
saga
45
日光東照宮の眠り猫でお馴染みの左甚五郎。謎多き人物であり、本作のように右手が義手(その理由は本作第五話で明らかに)で、その義手でさえ動くと言っても納得してしまう(笑)。宿場での彫り物の話は落語「ねずみ」のように、人情味あふれる甚五郎だし、流行り病に倒れた女房を想って彫った人形を求めてさすらう甚五郎の姿は、まさに鬼気迫るものがあった。2025/08/31
mushroom
27
右手を失った左甚五郎が行く先々で厄介事に巻き込まれる5編の連作短編集。自分が納得すれば閉じこもって彫り物をする左甚五郎。その出来上がった彫り物で事件を解決していきます。最後に続編の匂いを感じさせて気楽に読めた時代小説でした。2026年に第2弾が出るらしいので読みたいです。2025/07/12




