内容説明
熊本県A市の日野誠一郎は聖徳会日野病院の医師で、泌尿器科の部長をしている。ある日、日野医師は、A警察より、任意の取り調べを受ける。容疑は、「臓器売買」の疑いだった。日頃、日野医師は、人工透析患者を担当し、日本における「臓器移植」の困難に直面していた。手をこまねいて、死を待つばかりの患者に、日野医師は、レストア・キッドニ(修復腎)、がん患者から摘出した腎臓の移植手術を何度か行っていた。テレビ制作会社のディレクターの沼崎恭太は、事件の裏に陰謀の匂いを感じ、アジアでの「臓器売買」の実態を調べるため、上海に飛んだ―。「臓器移植」をめぐる医療サスペンスの傑作。
著者等紹介
麻野涼[アサノリョウ]
1950年埼玉県生まれ。早稲田大学卒業後、ブラジルへ移住。サンパウロで発行されている日系紙パウリスタ新聞(現ニッケイ新聞)勤務を経て、78年帰国。以後、フリーライター。高橋幸春のペンネームでノンフィクションを執筆。87年、『カリブ海の“楽園”』(潮出版)で第六回潮ノンフィクション賞、91年に『蒼氓の大地』(講談社)で第13回講談社ノンフィクション賞受賞。2000年に初の小説『天皇の船』(文藝春秋)を麻野涼のペンネームで上梓(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Tsuyoshi
67
番組製作会社が富士の樹海で片方腎臓摘出した女性の凍死体を発見。捜査および取材を通して臓器移植における日本での様々な障壁や利権の現状、中国をはじめ臓器売買と取られかねない取引現場の事情など興味深い題材を扱いつつミステリーもしっかりしていて楽しく読めた。認められていない移植方法を行い捜査上にあがった日野医師だったが、純粋に一人でも多くの命を救いたい姿勢に医者としての覚悟と潔さを感じて清々しかった。2018/04/15
Rin
60
臓器移植からのミステリ。ミステリはもちろんのこと、普段あまり考えることのない臓器移植について深く知ることが出来た一冊だった。腎臓を必要としている人々。腎臓を移植することさえできれば、生きていくことが出来る。たとえ数年の命でも腎臓を必要としている人たち。彼らに提供される臓器は数少なく、そこにレストア・キッドニが深く絡んでいて。レストア・キッドニが彼らの希望になっていること。抱える問題と必要とする人たち。ミステリは後半に一気に解決へと向かうが、臓器移植に関わる物語のインパクトがとても強く残った物語でした。2019/01/31
きさらぎ
40
臓器移植をめぐる医療サスペンス。割と好きな分野だけど、前半は専門的な内容が多く難しかった。核となる部分を隠して話を進行させる手法が多く読みづらかったが、中盤から一気に畳みかける展開に。内容的には、臓器移植の必要性や問題点を訴えかけながらもちゃんとミステリーになっていて、頭を使ったし最後まで楽しめた。2015/04/15
kei@名古屋
38
医療モノ、ミステリー、いろいろ絡み合ってますが、ルポライターものが好きな人はいいかも。マスコミである自分に自問自答しながら追っていく探偵役?も面白いが、何よりも未完成具合が今後が楽しみな作家さんだなぁと。なんて上から目線。2015/03/22
ミスターテリ―(飛雲)
28
初読みの作家さん。いままで腎臓移植がテーマの医療ミステリーをいくつか読んできたが、その中でも一番分かりやすかったかも、なぜ日本では腎臓移植が難しく、海外の臓器売買が存在するのか、そしてドナーを待つ患者の苦しみや、看病する肉親の悲痛な気持ちが丁寧に描かれてある。患者の命を助けるために、自己犠牲の精神で腎臓移植をおこなう医者、人の命をお金儲けに利用して、中国で移植ビジネスを行うブローカーや、その背後にいる議員や悪徳院長。最後まで複雑な人間関係もなく、スッキリ読めて読後感も最高の作品であった。 2020/04/04