感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
塩崎ツトム
5
社会主義やソビエト史に関する知識が必須だが、高校生物程度の知識でも結構読み進められる。現在だったら考えられないが、ショウジョウバエを実験動物にする遺伝学研究が「役に立たない蠅の研究をするなんてブルジョア」と糾弾されていたという事実。ああこれが「反知性主義」ってやつか……。2015/06/30
A.Sakurai
3
ルイセンコ事件が起きたソ連の背景を当時の文献から丁寧に追っていく。基本的な原因としてスターリンによる急速な工業化と農業集団化政策をあげる。膨大な犠牲を正当化するために政権の絶対化を進めざるを得なかったお馴染みのアレである。その際に手段として思想面の哲学を使うのは分かるが、科学の戦線として生物学が対象になったのがピンとこない。大物哲学者やスターリン自身が論争に乗り込んでいるのだ。別の科学分野でも同じような事態があったのだろうか。日本のルィセンコ論争については短く言及。ソ連の追随で終始する主体性のなさを指摘。2017/10/07
やす
2
ルイセンコが力をつけるまでのソ連の化学的、政治的背景が非常に丁寧に記されていて分かりやすい。日本がルイセンコ主義に強く影響された理由について詳しく知りたいと思った。2017/06/05
Violaの錬金術師
2
マラーやヴァヴィロフを輩出した嘗ての遺伝学大国はなぜ、時代遅れの獲得形質遺伝説を支持するルイセンコ主義などというバカバカしいオカルトに傾倒していったのかを解明する。筆者が強調する、弁証法的唯物論は必ずしも認識の障害とはならず、むしろ20年代初期は遺伝学者とダーウィン主義者の間で建設的な議論を作ったのだという主張は興味深い。哲学の科学への寄与・悪影響がいかにして生じるかを問いかける。科学・哲学・政治・ソ連に跨がる学際的な問題であり、読んでいて勉強になった2013/12/27
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