内容説明
なぜ反戦・平和は無力なのか?戦後日本の国是ともいうべき反戦・平和の可能性と限界について、戦没者遺族運動の追求した「戦没者」像に注目して読み解く。反戦と平和の乖離に対する劇作家三好十郎の警句は決して過去のものではない。
目次
序章
第1章 戦没者遺族運動の出発と戦後国家への志向
第2章 犠牲者=受難者としての「戦没者」と反戦・平和
第3章 受難者から貢献者へと転換する「戦没者」
第4章 戦没者遺族の世代間格差克服の試みと英霊精神の再生
第5章 兵士・戦没者・遺族をめぐる劇作家三好十郎の視線
終章
著者等紹介
今井勇[イマイタケシ]
1976年香川県生まれ。筑波大学博士課程人文社会科学研究科単位取得退学。博士(文学)。現在は筑波大学・東京外国語大学などで非常勤講師。2017年4月より、国立公文書館アジア歴史資料センター調査員(非常勤)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふとし
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戦没者遺族は戦後国家から見放されたためまともに生活することが困難となり遺族運動が生じた。天皇が戦前戦後を通し連続しえたことで遺族においても戦前戦後が連続する可能性を見いだせたのは重要。遺族運動が進むにつれて反戦・平和が乖離していく。我々は戦争を忌避しているものの、戦没者を英霊としてたたえている。この行為が大いなる矛盾であることに気づかされる。他国の軍隊が攻め込んできたらどうする?の問いに対し、自衛のために戦うか、それとも武器を手に取らず殺されるか。平時から考えておく。緊迫する現代において考察の深い一冊。2017/10/03