内容説明
「自分のことを自分(だけ)で決める」能力としての「自律」は、近代的な「自由」観の中核に位置付けられ、「自律的な主体」像は政治・社会哲学の暗黙の前提とされてきた。しかし、近年、心の哲学や認知意味論、精神分析などにおいて、「自律」の意味が根源的に問い直され、「自律」と結びついた「自由」の余地が徐々に狭まっている。ジェンダー研究、自由論、環境哲学などでは、「完全な自律」を必ずしも前提としない、「社会」と「人間」の理想像が探求されつつある。大きく変貌しようとしている「自由と自律」の再考を通して、新しい政治・社会哲学の可能性を展望する。
目次
自由と自律
全的自由の立場
政治的自律と民主主義的討議
リバタリアニズムにとってリバタリアン・パターナリズムとは何か
リベラルな普遍主義?―ヌスバウム流リベラル・フェミニズムへの問い
掘り起こされ、芽生えてゆく自由―フェミニズム理論の第三の波
意識覚醒(CR)とフェミニズム認識論
構築主義の内なる「本質」―性的指向性と差別是正の論理
性の自己決定と“生”の所存―性的指向の“越境”をめぐって
生死をめぐるモラル・ディレンマ:『私の中のあなた』の物語世界から見えてくる“自己決定”の不可能性
専門職の「自律」の転換―医学研究を監視するのは誰か
コミュニケーション的理性からミメーシスへ―現代におけるシステムの構造転換と抵抗の行方
資本制と時間―その基礎的構造とわれわれの生
カニバリズムの楽園:動物と人間の境界をめぐる思想的問題
著者等紹介
仲正昌樹[ナカマサマサキ]
金沢大学法学類教授。政治思想史・法理論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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takizawa