内容説明
大いなる物語=歴史の最終的な「目的」の実現に向けて無限に活動し続ける普遍主義的な「主体」像が崩壊し、「人間」の「有限」性が露呈しつつある。普遍性に取り込まれない「他者」たちに対して「無限の正義」の暴力が発動するポスト歴史の“時代”に、様々な小物語を横断する「正義」について語ることに意味はあるのか?ドイツ・ロマン派からベンヤミン、吉本隆明、フーコー、ネグリに至るまでの反歴史哲学の系譜を振り返りながら、史的構想力の回復について考える。
目次
第1章 「歴史」の廃墟に潜む「物語」
第2章 「歴史」の内に再現前化する「無限の正義」
第3章 『歴史の終焉』から『文明の衝突へ』―アメリカの世界観戦略の転換をめぐって
第4章 日本的な批判的知性の歴史的限界と「ポスト・コロニアリズム」―市民派的な「社会思想史」の終焉
第5章 「共同主観」の「歴史」性―吉本・広松・フーコー
第6章 普遍主義と近代の神話―ヘーゲルとシュレーゲル
第7章 プラトン主義としての唯物論―レーニンのマッハ批判の戦略的背景をめぐって
第8章 史的唯物論における「表象」と「現実」のねじれ
第9章 『帝国』のポリティクスとマルチチュード
著者等紹介
仲正昌樹[ナカマサマサキ]
現職、金沢大学法学部助教授。専攻は社会思想・比較文学
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