内容説明
『西遊記』、『ガリヴァー旅行記』、ラペルーズの大航海―多彩な資料から浮かび上がる、身近な海の新たな姿。思考を広やかな地平へと誘う、トポグラフィック・エッセイ!
目次
1 『西遊記』と日本海(三蔵法師と猪八戒が妊娠する話;北朝鮮からの漂流者 ほか)
2 『ガリヴァー旅行記』と日本海(ダンピアとデフォー、そしてスウィフト;「新オランダ」を消したリリパットの地図 ほか)
3 ラペルーズの航海と日本海(ラペルーズの航海―日本海まで;日本海を行くラペルーズ ほか)
4 日本海への欲望(ロシア人の海への渇望;日本海への新しい欲望 ほか)
著者等紹介
中野美代子[ナカノミヨコ]
1933年、札幌市に生まれる。北海道大学文学部卒業。オーストラリア国立大学助手・講師、北海道大学文学部教授を歴任。現在、北海道大学名誉教授。専門は中国文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まーくん
100
初っぱなから三蔵法師と猪八戒が妊娠する話なぞ出てきて”何のこっちゃ”と面食らってしまうが、著者中野美代子先生は札幌生まれで、中国文学が専門。視点の中心を北海道に置いて日本海を見渡す。『西遊記』から『ガリバー旅行記』そしてラペルーズの航海と縦横無尽に語る、その博識には驚く。先日読んだブルーバックス『日本海』のコラムにあった”ラペルーズが日本海ですれ違った北前船”が本書の書影になっており、当時(18C末)依然として謎に包まれていた日本海北方域の地理確定を目指した仏海軍探検航海の顛末を興味深く物語る。2021/09/14
Mzo
17
日本海に纏わる史実をベースに語られたエッセイ。ラペルーズの航海の話が一番面白かった。最近、地政学がブームになりつつあるみたいだけど、その入門書としても取っつきやすいかも。ただ、あまり系統だった書き方ではないので、苦手な人は苦手かな?2016/03/27
しゃが
13
呼称問題が気になっていた。久々にワクワク感いっぱいの知的興奮を感じさせてくれた。中野さんの中国文学作品をよんでいたが、これはバラエティー豊かな、ユニークな著作だった。日本海=内海への意識や歴史的な呼称のことはもちろん、サブタイトルの「世界地図からの旅」をし、それぞれの年代に作成された経緯やそこから視えてくる世界の歴史や政治まで導いてくれる。安全保障的なきな臭いことではなく、今のクリミア半島問題は他山の石なのか。幼い頃から日本の海というイメージでもあったが、海はつながっていたのだと再認識した 2015/06/04
kuukazoo
6
著者の言う通り、確かに日本海のことはよく知らない。わたしの生まれる前にすでに地図は存在し、地図の通りに陸も海もあるものという前提で生きている。内側の視点から見られがちな日本海を「外側とのつながり、抜け道」という視点から見る。日本海、って日本人がつけた名称じゃなかったのか。海流に乗って漂着した人々、18世紀ラペルーズの太平洋大航海、北の先住民族。ラペルーズのことは初めて知った。彼の航海の途中に日本海と北海道があったことも。2019/07/23
Wataru Hoshii
5
中国古典文学の専門家として、汎東アジア的な表象世界を縦横無尽に語るエッセイでおなじみの著者が、日本海について語る。西遊記と日本海のつながりに始まって、ガリヴァー旅行記、日本ではあまり知られていないラペルーズの航海(この項必読)、そしてなんとロシア(そして現代中国)が日本海に注ぐ眼差しについてまで!多くの日本人にとっての日本海のイメージと、東アジアの地政学における日本海の意味がいかに異なっているかを理解することにこそ、大きな意義がある。日本人が無視しようとしてきた、日本海の「他者性」を改めて意識すること。2015/07/14