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内容説明
14世紀、カタルーニャの農村で、農奴と村娘の婚礼の宴が晴れやかに行われていた。しかし、領主の来訪によって一変。泣き叫ぶ娘は領主に暴行され処女を奪われてしまった。領主は夫より先に新妻と同衾する権利が認められていたのだ。この衝撃的な冒頭から一大叙事詩の幕はあがった。理不尽に絶望し自由という新天地を求めて力強く歩き出した農奴バルナット。時代の渦に翻弄されながらも尊厳を失わずに生きていく運命は如何に。
著者等紹介
ファルコネス,イルデフォンソ[ファルコネス,イルデフォンソ][Falcones,Ildefonso]
1959年生まれ。スペイン、バルセロナ出身で本職は弁護士。『海のカテドラル』で、ホセ・マヌエル・ララ財団主催の年間ベストセラー小説賞(2006年)をはじめとするスペイン国内の各賞ほか、フランスのFulbert de Chartres賞(2009年)、イタリアのGiovanni Boccaccio賞(2007年)など、海外でも文学賞を受賞、高い評価を受けている
木村裕美[キムラヒロミ]
上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。翻訳家、マドリード在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
32
【コロナ52-1】1348年のバルセロナの黒死病が登場し、書名が「海のカテドラル(大聖堂)」とくるから、ケン・フォレットのエンタメ歴史物語「大聖堂」【コロナ20,24】のエピゴーネンだろうと思っていた。しかし、とんでもない間違いだった。この2006年のカタルーニャの弁護士のデビュー作は、カタルーニャ・アラゴン連合王国とバルセロナの歴史を詳細に、そして批判も交えて再現する硬派な叙事詩だったのだ。領主の慣習法やカトリックの異端審問のなどの社会的矛盾を批判する一方で、都市バルセロナの活気と自由を称揚する。↓2020/09/06
サアベドラ
12
十四世紀の中世カタルーニャを舞台に、逃亡農奴の親子二代の波乱万丈の生涯を描く歴史小説。著者はバルセロナ出身で今作がデビュー作。本国スペインではベストセラーだそうで、確かにグイグイ読ませる力がある。中世を舞台にした群像劇で大聖堂の建設がテーマということで、ケン・フォレットの『大聖堂』に似ているが、こっちのほうがエンタメ色が強い気がする。訳は悪くないが、もうちょっと歴史用語を調べてほしいのと、カタカナ語(チャーター、オファーなど)を多用するのは題材的に合わないと感じた。2016/02/02
Nat
10
「風の影」を読んで、バルセロナに興味をもったので色々調べているうちに、この小説にたどり着いた。中世の重苦しい雰囲気の中で次から次へと不幸が襲いかかってくる感じ。主人公の幸せを祈りつつ下巻へ。2019/05/29
RIN
6
14世紀のバルセロナ、農奴から逃亡農民になった父と息子の話。帯ジャケの粗筋はほんのさわりで、物語は『大聖堂』みたくスケールが大きい。厳格な階級社会や教会の人々の心に占める存在感の大きさなど、現代日本人には思いを共有するのが難しい面もあるが、この時代のヨーロッパの混沌さが逆に躍動感に繋がっている。惜しむらくは、校正の甘さ。ちょっとしたことでも誤字脱字、兄と弟のミスなどは、物語世界から急に現実に引き戻されるので勘弁してほしい。この時代の物語は戦争が外せないので、下巻が楽しみ。2011/12/18
Bee
4
14世紀スペイン、バルセロナが舞台。史実を背景に、市井の人々の生涯を巧みに織り交ぜた読みごたえある作品だった。バルセロナに再び訪ねることが叶うなら、海の聖母教会をこの目で確かめたい2010/05/25