内容説明
映画会社の助監督試験に落ちた五堂顕は、運命的な出来事によって照明部に配属されると、照明技師としての腕をめきめきと上げていった。数年後、顕は、恩人である女優・衣笠糸路に対して賞味期限切れだという周囲の心ない言葉に憤激し、ある方法を使って最高のライトを当てようとするが―。月日は流れ、4Kや8Kの時代に突入すると、照明技師の存在を軽んじる監督が現れる。「ライト・スタッフ」は本当に必要なのか。照明の未来はどうなってしまうのか―。
著者等紹介
山口恵以子[ヤマグチエイコ]
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒業。会社員を経て、派遣社員として働きながら松竹シナリオ研究所で学ぶ。その後、丸の内新聞事業協同組合の社員食堂に勤務しながら小説を執筆。2007年『邪剣始末』で作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みかん🍊
111
映画が娯楽の王様だった昭和30年助監督試験に落ちた顕は偶然居合わせた現場で照明のアルバイトをする事に、数々の現場を巡り、気難しい監督や煌びやかな俳優たち、気の置けない仲間とライトスタッフとして全盛期からテレビに移行して衰退していく映画業界に身を置き続けた顕は技士として俳優たちを輝かせる、よく女優が照明にうるさいというが光の当て方でシミしわをなくしたり美しく魅せることが出来る技術は素晴らしい、同級生杉子が初の女性脚本課と言いながら飼い殺しの男優先社会は今も昔も変わらない、面白く一気読みでした。2021/02/04
ゆみねこ
100
映画監督を目指した五堂顕は、助監督試験に落ちたが運命的な出来事で照明部に配属された。才能に恵まれた監督たちや女性であるために脚本を採用してもらえない浜尾杉子。時代と共に映画が娯楽の王様から転落しテレビの天下へと。一人の照明マンの成長と人生を楽しく読了。2021/02/04
ぶんこ
67
映画界の様々な職人仕事のようなお仕事小説で面白かったです。助監督採用試験に落ちた顕は、脚本部に採用された杉子に連れられて撮影所へ。そこでのアクシデントで照明の仕事に進みます。女優さんを美しく見せる照明マジック、イマイチわからなかったのですが、この本を読んで理解できました。顕は上司に恵まれた。上司によってかなり収入にも差が出るようです。また監督と俳優の差が「自ら創り出す人」「待つ人」というのも目から鱗。監督をやりたがる人が多い訳がわかりました。仲間たちとのやりがいのある仕事の楽しさが溢れていました。2021/02/24
むぎじる
46
昭和30年代。娯楽の王様といえは映画だった。助監督を目指していた五堂顕が、あるきっかけから照明部に入り、移り変わる娯楽を時代を駆け抜ける。照明はじめたくさんのスタッフが俳優を支える。俳優たちにとってもスタッフの助けがなくては動きが取れない。濃密で独特な世界を垣間見ることができてワクワクした。尊敬するベテラン女優を、自分のライトで美しく見せようと奮闘する顕に、下っ端で苦しみながらも勉強を重ねてきた若き日を思い出し胸が熱くなった。エンドロールが流れてきそうなラストにもぐっときた。熱量の高い素敵な作品だった。2021/04/13
はれひめ
45
昭和30年代から映画照明技師をしていた男顕の人生譚。お仕事小説。昔のスタァさんは圧倒されるオーラがあっただろう。出てくるスタァさんはあの人あの娘と想像が膨らむ。老若男女問わず読めて、苦楽の振り幅がさざなみ程で、昭和のサザエさん的清らかなストーリー。東京オリンピックを機に時代は映画からテレビへ。次の五輪でネット配信に大きく移行しそう。朝ドラ向きで顕役は窪田正孝くんを推します。2021/03/06