潮文学ライブラリー
カスターブリッジの市長

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  • サイズ B6判/ページ数 501p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784267016585
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

酒に酔った勢いでヘンチャードは妻と娘を見知らぬ男に売り飛ばす。翌朝、酔いが覚め、必死に行方を探すが、すでに男と妻と娘の姿は消えていた。深く反省したヘンチャードは十八年後、カスターブリッジという町の市長となっていた。その町にかつての妻と娘が姿を現す。それが波乱のドラマの幕開けだった。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

119
どこか不可解で、終始展開に納得できないまま読み終えた。ヘンチャードが酔いに任せてしたことは浅はかな重い罪だが、そこに居合わせた者は等しく罪深い。ヘンチャードの転落に手を差し伸べず、掌を返した者達もまた罪深い。主人公の立身出世の為の我慢強さとカッとしやすさの同居や、ファーフレーの恩の忘れ方などはあり得なく思えた。しかし、作者の前書きを思い出し、これがイギリス人から見たスコットランド人と言うことだろうかと考えるも…。当時でもさまざまな言葉が作者に寄せられたのというのは、さもありなんと思える。2017/04/08

扉のこちら側

78
2017年64冊め。【268/G1000】酔った勢いで妻と娘を見知らぬ男に売り飛ばした職人ヘンチャードは、後悔の念から断酒し市長にまで上りつめる。反省し自分を変える機会だったはずだが、彼の激しやすい性格は変わらなかったおかげで、そして生来の間の悪さが祟って散々な目に遭ってしまう。『日陰者ジュード』とは違った意味で運命に立ち向かう話ではあるが、なかなかヘンチャードには共感しにくい。 2017/01/21

星落秋風五丈原

33
【ガーディアン必読1000冊】ヘンチャードは酒に酔った勢いで妻スーザンと娘エリザベスを見知らぬ水夫に売り飛ばす。深く反省したヘンチャードは18年後カスターブリッジという町の市長となっていた。トマス・ハーディは容赦がない。登場人物は一旦悲惨な境遇に落ちると、奈落の底に落ちるまで一度も止まらない。だから人は行動する前に熟考しなければならない。ヘンチャードは妻と娘を売り飛ばした後語。水夫を探しながら旅を続ける。普通ならば悔い改めた者は許され、天国に迎え入れられるはずなのに、神はヘンチャードに優しくない。2006/01/25

Miyoshi Hirotaka

28
妻売りが風習として残っていた19世紀前半の英国が舞台。酔いに任せ妻と娘を水夫に売った貧しい農夫は、改心し、断酒し、市長となり、街の中興の祖として尊敬され、聖人と慕われた。しかし、母子と再会し、贖罪の人生を歩みかけたところで暗転。あらゆることが裏目に出て転落していった。すべてを失い、どん底に落ちた男に救いの手を差し伸べたのは元使用人。酷い扱いをしたが、老母には石炭を分け与えた。本人すら忘れていた積善が作用し、人間らしい最期を迎えた。因果応報はあざなえる縄の如し。長短の周期があり、醜くも美しくも人生を彩る。2024/03/31

田中

26
いくぶん古風さのある物語だが、簡易な文体で綴られているからとても読みやすい。でも、その中身はとても痛切であり、人生の皮肉さに翻弄される人々を描いている。ヘンチャードの退けがたい因習的感情が身を滅ぼしてしまった。豪商となり市長まで登りつめたのに。愛する人との齟齬、武骨な感情的な嫉妬が、とり返しのつかない結末になってしまうのだ。著者の非情なまでのペシミズムが背景となりその犠牲者がヘンチャードなのだろう。それでも、彼に対する同情と憐れみの視点が心を打つのだ。感情の渦に巻き込まれる愚かさは普遍的なものである。 2022/06/23

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