内容説明
昭和10年代、おもに関東地方の農村に打ってまわる、小さな旅芝居の一座があった。加賀美秀三郎一座―。先代秀三郎が大正のなかごろに興し、当代秀三郎は2代目にあたる。一座ではいま、戦争未亡人とその子どもをネタにした現代劇「第二の曙」を上演していた。劇は予想を上まわる評判で、9日目まで、連日、大入りがつづき、いよいよ10日目の千秋楽をむかえた。舞台は第3場から第4場へうつり、満州夫がさいごのせりふで、客を泣かせる場面にさしかかったときだった。客席のかたすみから、とつぜん「芝居、中止」の怒声がとんできた。