内容説明
みなにばかにされながらも虔十がうえた七百本の杉苗。そだった杉林は…(『虔十公園林』)。方言のひびきが物語の味わいを深める、地方色豊かな二話。
著者等紹介
宮沢賢治[ミヤザワケンジ]
1896年岩手県花巻市生まれ。盛岡高等農林学校卒業。1924年詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を出版するが、1933年9月21日、病気のため三七歳の若さで亡くなる。数多くのこされた、すぐれた詩や童話が、没後、整理・出版され、いまもなお多くの人びとに読みつがれている
はたこうしろう[ハタコウシロウ]
1963年兵庫県西宮市生まれ。高槻市立冠小学校卒業。絵本、挿絵、装丁の仕事で活躍
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感想・レビュー
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めしいらず
42
無垢でいることで、いつもいつも物笑いの種にされる幼い虔十。だから懸命に笑わないフリをする。それでも彼の真っ直ぐな心は、偽りのお面を破って顔をのぞかせる。彼の植えた杉苗は大きくは育たなかったけれど、多くの人たちに自分たちの無垢で真っ直ぐだった頃を思い出させる種となる。はた目には短い薄倖な人生。でも、虔十にはいつでも包み込んでくれる家族、心底大事と思える居場所があったから、やっぱり幸せだったんじゃないかなぁ。2013/10/28
chiaki
37
『虔十公園林』すごく良かった。虔十の清らかで穢れのない心のなんと美しい。欲はなく決して怒らない虔十の、唯一の欲と唯一の怒り、その力強い想いが心に沁み入り、私も唇を噛みしめる。変わり果てた故郷の姿の中に、変わらないものがあるということが、どれほどの安らぎを与えることか。虔十の意志を尊重し、守り続けてきたご両親もまた素晴らしい。心暖まる『ざしきぼっこ』にも癒やされました。ほんわかとしたはたこうしろうさんの挿し絵も作品に合っていて良かったです。2020/12/19
tokotoko
37
ちょっぴり不思議な本でした。読んだ瞬間は、「?」とか「そうなんだ・・・。」って感じで、何も感想が湧いてきません。けれど、翌日になって、ふと!虔十さんって、実はスゴイ人だったんじゃない?!って思えてきて。それからは、虔十公園林についていっぱい調べ、ついに!近隣かはわかりませんが、ある小学校の石碑まで読んでしまいました。きっとね、本当に虔十さんがちゃんと称えられているかどうか、確かめたかったんだと思います。これからも、虔十さんの大好きだった子どもの笑い声、公園で響き続けますように。虔十さんまで届きますように。2015/07/30
№9
26
杉苗を植えた虔十も、その虔十をいじめた平二もあっけなく死んでしまう。当時、子どもたちの死亡率というはまだまだ高かったのだろう、その小さな命のはかなさに涙する。そして主人公を失ったこの物語がそれで終わってしまうのではなく、その虔十の杉林は子どもたちの格好の遊び場であり続け、何十年も経て「虔十公園林」としてたくさんの人々に、自然の息吹とともに「ほんとうのさいわいがなんだかをおしえ」つづけたのだったと物語りは終わる。その主題は子ども向けというより、大切な何かを置き去りに日々生きてきた大人たちへの寓話なのだった。2013/10/26
ケ・セラ・セラ
24
宮沢賢治の作品は沢山出版されていますが、こちらははたこうしろうさんの絵によって主人公の虔十がより温かく魅力的に描かれています。周りの子どもらにばかにされても、家族が優しいのがいい。方言の言い回しが読んでいて優しいですね。時が経っても変わらずそこにあるもの。心に沁みる作品。低学年から読めるように、総ルビ、下部に方言や難しい言葉の説明文付き。岩崎書店から出版されている宮沢賢治シリーズ。それぞれいろいろな方々が絵を手掛けていて、他も読んでみたくなりました。2022/03/22