感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モモ
28
ローマ法王配布のカード「焼き場に立つ少年」の写真を撮影した元米従軍カメラマン・ジョー・オダネル氏。妻で日本人の坂井貴美子さんとの共著。原爆投下直後の長崎・広島で撮影した写真を直視できず封印。40年余りたった頃、被爆者の写真が貼られたキリスト像を見て一般市民を犠牲にする原爆を憎み、封印を解く。アメリカで原爆反対を唱える苦難が伝わる。彼の写真は悲惨な写真だけではなく、日本の日常生活も撮影していて、見るものに判断をゆだねるもの。再訪した長崎の教会で泣き出した話など、妻からの話が興味深い。夫婦の絆を感じる一冊。2019/11/25
きょう
9
ジョー・オダネルさんに年を追って聞き書きしたかと思う生々しさ。ジョーさんがとても素直な人なのだと思います。何十年経っても忘れることが出来ない経験をされたということでしょう。被爆地に立った時に地面が柔らかかった、に衝撃。何もなくまっ平らになった街は近年の災害のように瓦礫を片付けたのでなく、灰の上に…。「焼け跡に立つ少年」を日本に紹介されたとき、ジョーさんも被爆の影響で脊椎の両側に金属棒を入れて支える状態だったとは、当時も報道されたか記憶にありません。繰り返してはならない、そのために知る必要があると思います。2021/01/26
ほじゅどー
9
★★★編著者の坂井貴美子さんは終戦直後に米従軍カメラマンとして来日したジョー・オダネルさんの妻。ジョーは、佐世保、長崎、広島、神戸を歩き回り、目にした無残な光景を私用カメラでも撮影。後に自分の写真を使って「アメリカの原爆投下は間違いであった。何万人もの市民を一瞬のうちに殺した罪はホロコーストに匹敵するもの。」と反戦・反核活動に従事。日本での写真展で二人は出会った。2019/03/30
sasha
8
アメリカ海兵隊の従軍カメラマンとして終戦の1か月後に佐世保に上陸し、爆心地の記録を残すことを任務としたジョー・オダネル。「日本人の姿を撮影してはならぬ」とした軍の命令に反し、彼は自分用に戦後の日本人の姿を撮影し、記録としてアメリカへ持ち帰った。そのなかの一枚亡くなった弟を背負い、直立不動の姿勢を取る「焼き場に立つ少年」については美智子皇后も2007年のお誕生日に際しての記者会からの質問に文書でのご回答で触れている。原爆を落とした側が「必要なかった」と訴えるまでには様々な葛藤もあったのだろうな。2018/09/16
圓
4
「焼き場に立つ少年」の写真を見て、写真を撮ったカメラマンは誰なのか、という好奇心からジョー・オダネルの名前を知った。戦中は従軍カメラマンとして広島・長崎の惨状を撮り、戦後は大統領付きカメラマンとして大統領演説を記録し、リタイアしてからは戦争の惨状を示して反戦を叫ぶ活動を精力的に行ったという。軍人でありながら、銃ではなくカメラを持って従軍したこと、原爆投下直後の広島長崎で撮影を行ったために入市被爆により重い健康被害を受けたこと、キリスト教徒であること、そうした複雑な立場が彼の活動の原動力だったようだ。2018/08/09