感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
92
表紙の写真はココ・カピタン「NAÏVY」から「DEEPEST JUMP TO BLUE」著者が精神疾患を抱える母親をケアしてきた日々を振り返りながらよく見ていた写真。出産して母となった著者は、今は要介護2に回復したその母にケアのお返しをしてもらっている。ヤングケアラーという当事者は、表に出たくないのかもしれない。それを活字化することは「自分の物語を錨にして、心のなかの混沌に耐えている」ことで保っている自分のバランスを失うことになるのだ。内藤礼の水滴の作品のように、ほどけて、つながり、流されていくのである。2024/04/06
どんぐり
82
医学書院の〈シリーズ ケアをひらく〉の一冊。ヤングケアラーの内なる声を綴った当事者の語り。著者は、若い頃から、躁うつ病の母親と過ごしてきた。身体的ケアに直接関わることがなかったことに、果たして自分がヤングケアラーといっていいのか、ケア当事者としての戸惑いや違和感が綴られている。母親の病に付き従うように、「母の具合の悪さや不安が、部屋のすみずみまで伸び縮みするように感じ、そのなかで時間も伸び縮みし、時計の針の音が妙に大きく、自分の鼓動のように感じる」→2024/02/04
pohcho
52
ヤングケアラーというより精神を病んだ家族を持つ娘たちの本かな。二人の女性のインタビューがあり、かなこさんの話が印象的だった。周囲に助けを求めても通り一遍の対応しかしてしてもらえず、思いあまって症状のひどくなった母を入院させたら、気がつくと母がベッドに縛りつけられて叫んでいたという。世界の精神科病棟の約1/5が日本にあるそうで、その人権侵害ギリギリの医療が恐ろしいし、社会からネグレクトされ追い詰められる家族は本当につらいと思う。著者自身にも精神を病んだ母があり。後半は著者の心の奥を探っていくような内容だった2024/02/28
ほし
15
本書において、筆者はヤングケアラーと呼ばれる人たちへの聞き書きを経て、ヤングケアラーのありようを言葉として書くことの困難さに直面します。その後、筆者による当事者研究ともいえるような内省と共に、ケア的主体における自己消滅/自己保存の揺れ動き、犠牲と献身のうえの自由を見つめるという一冊になっています。個人の自由が尊重される近代社会において、避けるべきものとされる自己犠牲。聞き書きと内省を通じ、そのなかにある揺らぎを見つめる筆者の筆致は切実で、読んで胸に迫るものがありました。2023/12/02
チェアー
5
ヤングケアラーと副題にうたった本の中で、自己犠牲を称賛する表現が出てくる事は誤解を招くだろう。ヤングケアラーに家族との「幸福」があることを説き、犠牲なくして、幸福がないのだと言ってしまった場合、副作用が大きすぎる。2024/01/11