内容説明
感じるだけが皮膚の仕事ではない。皮膚は未知の思考回路である。
目次
第1章 皮膚は未知の思考回路である
第2章 表皮は電気システムである
第3章 皮膚は第三の脳である
第4章 皮膚科学から超能力を考える
第5章 皮膚がつくるヒトのこころ
第6章 皮膚から見る世界
著者等紹介
傳田光洋[デンダミツヒロ]
資生堂ライフサイエンス研究センター主任研究員。1960年、兵庫県神戸市生まれ。京都大学工学部工業化学科卒業。同大学院工学研究科分子工学専攻修士課程修了。1994年に京都大学工学博士号授与。カリフォルニア大学サンフランシスコ校研究員を経て、2002年より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
k5
59
センス・オブ・ワンダーに溢れた皮膚科学の本。刊行当時はかなりの話題書で、刺激的な「第三の脳」にフォーカスした書評を見た記憶があるのですが、より重要なのは副題の「皮膚から考える命、こころ、世界」の方では、と。皮膚感覚ということにかなり拡張性を持った思考の塊であり、内部と外部を分かち、自我を形成する皮膚感覚のエピソードや、閉じた空間としての人体では因果律が逆に働く、というような、科学的というより身体論哲学として極めて面白い本です。2020/06/26
Sakie
14
皮膚の構造から、研究者がそんなこと書いていいのか級の仮説まで、幅広いトピック。しかし目下肌トラブルを抱える身としては、皮膚と精神の関わりについて知りたいのだ。『表皮が「興奮」するとバリアの回復が遅れ、肌荒れもひどくなり、「抑制」するとバリアの回復が促進され、肌荒れも治る』。痒さが痒さを呼び、「ここもかゆいよ」コールがやまない状態を私は「ケラチノサイトの大暴走」と呼んでいる。恒常的に放出されるサイトカインを鎮めるには何が良いか。精神よりも五感に心地良いことを心がけるのが実は最も効果的ではないかと思った次第。2022/06/24
アーロン
14
皮膚は体内から体液の流出を防ぐだけの役割に留まらず、多くの驚きの機能を兼ね備えていた。表皮の細胞であるケラチノサイトがとにかく優秀。命令を下す器官は脳だけではないのだ。いわゆる勘と言われている感覚は、皮膚が関係していた。「暗黙知」がそれで、相撲を例にした説明がわかりやすかった。鍼灸治療などの東洋医学への見解が大変興味深く、西洋医学との比較が勉強になった。未だに多くの仮説がある、生物の進化論に対しても、皮膚の研究者としての言及もあり、面白かった。2020/06/23
木ハムしっぽ
9
今年読んだ中で私の最もお薦めの本です。皮膚に対する認識が一変します。 化粧品会社の肌の研究者が情熱を持って研究した成果を踏まえつつ、大衆的には凄さが認知されていない皮膚の凄さを、多分野の研究者の論文や著作をフェアに例示しつつ、それでも皮膚が如何に驚異的な臓器であるかを謙虚に解説してくれます。 もし中学時代にこの本に出逢っていたらその道に進みたくなったのでは?と思ってしまう情熱に溢れた魅力的な本でした。2020/08/13
mawaji
8
東海林さだお「オッパイ入門」で紹介・推薦されていたので手に取った2冊目。臓器としての皮膚への統計熱力学的研究はちょっとムツカシイけれど医学的アプローチとは異なる新鮮さがありました。ヒトはなぜ体毛を失ったかという進化論的考察もとても興味深く読みました。三木成夫先生のいう「ヒトの顔は一種の脱肛」説はなかなかに衝撃的ですが著者の「はだかの理由はヒトは全身を顔にした」説とともに頷けます。もっと「肌感覚」を大事にして、非因果律的世界を維持してくれるケラチノサイトのためにスキンケアを怠らないようにしようと思いました。2021/02/14