内容説明
わたしは男が憎いのでございます。一人残らず堕地獄としてやりとうございます―と嘯く遊女・地獄太夫。容色無双、一笑すれば三千の傾城顔色なしとうたわれた彼女が自害した真相に、かの一休禅師が迫る。表題作ほか、初期時代小説、全十七篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
19
「武士と代議士は、タダで船や汽車に乗っても、船頭、ボーイ風情がとやかく文句をつけてはならん権利があるのじゃ。うそだと思ったら社会党にでもきいてみろ」 さて、これを言ったのは誰でしょう? 答え:荒木又右衛門。真剣白刃どりの技術を柳生宗冬に教えるために江戸に向かう途中であった彼が、タダ乗りを見とがめられた時の台詞である(本書収録『山田真竜軒』より)。後年、伊賀上野の仇討ちで名を馳せる又右衛門は、江戸時代に生き、「代議士」「ボーイ」なんて言葉、当然知るはずがない。勿論、「社会党」も存在しない。2004/07/29
カノコ
10
山風初期短編集。バラバラに書かれたものを、最近になって一冊にまとめたもの。今まで読んだ山風作品よりも、おどろおどろしさと色が圧倒的に足りない。しかし、「地獄太夫」「芍薬屋夫人」に見える女の迫力はやはりすごい。個人的には、「起きろ一心斎」「お玄関拝借」の、ユーモアがありつつも実は悲しい、そんな話が好きだった。2015/10/29
乱読家 護る会支持!
5
堺の遊郭で伝説として伝わる絶世の美女、地獄太夫。 何年か前に、堺のまち歩きをした時に、一休和尚との逸話も残る地獄太夫のことを知りました。 『性愛は、人を救う何かがある』 なんとなく、そんな気に人をさせてしまう。しかし、性愛は人を救えない(新たな命をはぐくんだら、、、違う形で人を救うのかもしれないけれど)。 そんな救われず、むしろ落ちていってしまう性愛は、むしろ地獄の入口なのかもしれない。 性愛は、しょせん、身体が身体を愛しているに過ぎない。 それに気づく事に意味があるのかもしれない。 知らんけど(笑)2021/03/06
紫
1
山風先生の初期の時代小説短編集であります。 全体にまだ手慣れていない感じはあるんですが、軽妙さと虚無感を合わせもった作品が多いのはこの人ならでは。収録作では「芍薬屋夫人」「地獄太夫」が群を抜いております。星4つ。2012/09/10
はる
0
伝奇要素の少ない時代小説だけど、それでも山田風太郎としか言いようのない作品で、楽しめました。2011/09/09