内容説明
奥州街道沿い、旧伊達領の北の外れにある、小さな城下町岩井。ここに鉄道が敷かれるという見通しを得た上村屋旅館の若旦那菊乃は、停車場の建設予定地と予測した吸川の埋め立て工事を請け負うよう、父の万治を説得した…。明治初期から大正末年にかけて描かれる、菊乃を中心とした岩井の町の人間模様。人々の絆が町を発展させ、町が人を育んでいく。しみじみと心に響く、傑作長篇小説。
感想・レビュー
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衛兵
14
東北の小都市、岩井。明治から大正にかけてこの町の発展に力を尽くした、旅館の主人、菊乃(男)の半生を描く。維新後も江戸時代と変わらない田舎町が、鉄道をきっかけにして近代都市に生まれ変わっていく。その過程には、たくさんの人びとの思いがあり、対立や挫折、犠牲もあるなか、みな必死に生きている様子が淡々と描かれていく。今の自分たちの生活の基礎が、彼ら多くの先人によって築かれたことを、私たちはつい、忘れてしまう。2017/11/11
