内容説明
ある朝目覚めると、額に×印がついていた。この奇妙な錯覚を振り払えないまま、×の不快感は日毎に増大していく。私は不安を覚えた。しかし、私はしっかりしている。意識が混乱したり、妙なことを口走ったりはしない。ただ額に×がへばりついているだけだ(×(バツ))。現実か妄想か―。自分の内奥に秘められた迷路に陥り、揺らぎ、崩れそうな世界を、ざらりとした手触りで描きだす不可思議な傑作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
美登利
50
原田さんの作品は面白おかしいエッセイが大好きなのですが、このような怖さを題材にした短編を書いていたとは、知りませんでした。かなり不気味です、星新一さんの昔読んだショートショートのように、短い中に日常的な生活に非日常を感じさせる精神的な崩壊というのかな。あっという間に読んでしまいましたが、読み終えてみると、色々と考えさせられるものでした。原田宗典さん、作家さんの中でも人気者でしたから、復活して欲しいと思う人も多いのではないでしょうか。2014/07/19
ATS
9
★★☆久しぶりに再読。思ってたよりも恐怖が強かった。夜読むもんじゃないなぁと(笑)読まれる方は昼間がいいかもしれない。2016/08/28
だいすけ
6
抱腹絶倒を予想していたが、案に相違してホラー小説のよう。読んでいてぞくぞくするような怖さがあった。2017/01/23
トモ。
6
ちょっと怖い短編集。「怖い」の質が、「お化け」「霊」的な怖さではなく、どちらかというと精神世界の崩壊というか、自我境界があいまいになって、世界が壊れていくような怖さの話が多かったような気がします。心の奥底にじんわりと沁みる怖さでした。面白かった。2014/03/18
acesmile@灯れ松明の火
5
エンジン始動から高速をすっとばすような流れで読ませてくれる短編集。もしくは序盤はジャブの応酬で後半につれて強烈なボディブローをくらう確率が増えてくるような一冊。短編集というと順番はどうでも構わないんじゃないかという作品があるが、この本の篇の順序はこれでないと駄目だと思った。「スコールを横切る」「ミセスKの鏡台」「空白を埋めよ」あたりが好き。2009/11/23