内容説明
絵が好きな少女・さくらには、不思議な力があった。空想で描いたはずの場所や物が、そのまま実在しているのだ。ある日、描いたのは、月光に照らされ、夜の池に浮かぶ美しい女性の姿。手には花束を抱え、胸にはナイフが突き刺さっていた。不吉なことと、母に絵を描くことを禁じられ、大人になったさくらは、祖母から叔母の話を聞いて愕然とする。女優だった叔母・ゆう子は、20年前、京都の広沢の池で刺殺されたというのだ。その死の様子は自分が昔描いたあの絵とそっくりである。さくらは、ゆう子が当時下宿していたペンションを捜し出し、部屋を借りて叔母の死の謎を探ろうとする。次第に明かされるゆう子の凄絶な人生。そして驚くべき死の真相とは…。
著者等紹介
岸田るり子[キシダルリコ]
1961年、京都市生まれ。パリ第七大学理学部卒。2004年に『密室の鎮魂歌』で第14回鮎川哲也賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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なな
26
初読みの作家さん。ちょっと 長々してるけど 真相が知りたくて だーっと読めた。もう少し 簡潔でもいいような気もする。そして 真相は そう来たかーー。2019/05/26
ゆみねこ
26
見たものを克明に記憶しておく「映像記憶」という能力を持つ、さくら。幼いころに発達の遅れがあった彼女の能力は、池に浮かぶ美しい女性の死体の絵を描き母を驚愕させる。その女性は無くなった叔母ゆう子。1988年と2008年を行き来する物語の展開はやや読みにくくも感じたが、おかしなカルト教団に追われた元女優という設定はありえるような、ありえないような。ラストは一応ハッピーエンドなので、読後感は悪くなかった。2012/09/18
野のこ
18
絵を描くのが大好きなさくら。その絵によって親や周りの人が驚愕し恐れる。その中の一枚のミレイのオフィーリアのような絵から叔母の不可解な死の謎へ。時間が交差しながら話は進み、途中まで一気読み。ミステリーの謎はちょっと拍子抜けしたけど、ラストのピエールとの再会にほっこりしました。ケニアの氷河を駆け上がるヒョウ、ひすいの首輪の似合う猫とかのフレーズは素敵。スイスのじゃが芋をチーズで絡めたラクレットは美味しそうでした。2017/01/09
ひろ
14
ラストに向かい尻窄みしてしまい残念。読みやすく一気に読めた2018/08/29
むつぞー
7
あやしい組織に狙われ、姿を隠そうとするゆう子。彼女の死当時の住人にはアリバイがあり、どう考えても叔母の殺害は不可能。そして彼女が死ぬ前に産み落とした赤ん坊が行方不明になっていると言うこと。この2つの謎を追って行くのですが、この謎と伏線の張り方は見事だと思います。謎は本格風なのにその謎にこだわるわけでなく、かといってゆう子の切迫したものを描ききれず…なんかすごく惜しい!と思ってしまいました。2010/02/25