内容説明
一九三六年、ベルリン。留学中の十六歳の日本人少年、伊集院操青は、ある「事故」をきっかけに、叔父継央の歪んだ欲望の魔手に堕ちた。娼館に身を落とされ、その若く美しい肉体に、あらゆる性技を調教されることとなる。一方、二・二六事件が「成功」した日本では、内閣参議となった北一輝が、元衆議院議員の黒澄幻洋に、独ソ関係の調査という極秘任務を与えた。外務省勤務時代に諜報員として数々の業績をあげた黒澄は、ベルリンに赴く。そして、ゲシュタポ長官ミューラーの計らいで、操青と出会うこととなった…。大戦前夜。軋み続ける列強の関係。ナチス内部の権力闘争。日本政府を掌握した皇道派と北一輝の思惑。暗躍するイギリス、ソ連、ユダヤ組織の特務たち。時代の波に翻弄され続ける操青の運命は…。
著者等紹介
野阿梓[ノアアズサ]
1954年、福岡市生まれ。西南学院大学文学部卒。79年、「花狩人」で第5回ハヤカワSFコンテスト入選第1席を獲得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
フキノトウ
22
見慣れない言葉や表現、冗長にも思える歴史(や、政治)の描写にうんざりしつつなんとか読了。美少年・操青への理不尽なまでの虐待(調教)は、普段は熟読しそうだけれど、目を背けたくなるような部分もありました。2018/12/16
藤月はな(灯れ松明の火)
16
「もし、2・26事件が成功していたら・・・」という世界を描いた正義はないことを知らしめるSF。高3の時に日本開国から戦後史までを懇切丁寧に教えてくださった日本史の先生に感謝です。ナチス、ソ連、アメリカなどの植民地を求め、争う大国同士の諜報戦と並行し、性奴に堕された貴族の美少年の淫靡な地獄絵図も描かれています。このシーンは本当に想像すると痛々しく、艶めかしいのでご注意を!まさか皆川博子作品や「姑獲鳥の夏」などの本で知った事柄もこの本で見受けられるとは思いもよりませんでした。装丁も本の雰囲気に合っていますね。2011/06/06
Ai
10
どんなにグロテスクな性愛でも、野阿さんの耽美な表現にかかると、とても美しくなる。舞台は、二・二六事件の成功したパラレルワールド。世界各国で都合のいい正義が擁立される中で、善悪の彼岸に逃げ込んでいった操青くんの後姿が切ない。2018/10/29
むつぞー
5
引き込まれたけど…お子さま・耐性のない人禁止2008/03/01
臓物ちゃん
4
美少年調教しながら知識も増える!増えまくる!一石二鳥!2012/06/19