内容説明
大物画家の私設美術館の開館日。展示室のドアを開けると、そこは…死体の山だった。オープンを祝う(呪う)かのごとく、聖者殉教の絵そのままに、老人や少女が、腸を引き出され、乳房を抉られ、歯を抜かれ、針鼠になり…。「聖エラスムスは腸を引き出されて殺されるであろう。聖セバスティアヌスは矢を突き刺されて…」招待客の新聞記者・持田の許に届いた不気味な手紙は、殺人予告だったのだ。血まみれの悪夢、狂気の大事件の幕が開く。
著者等紹介
飛鳥部勝則[アスカベカツノリ]
1964年、新潟県生まれ。新潟大学大学院を修了後、公務員となる。98年、『殉教カテリナ車輪』で鮎川哲也賞を受賞し、デビュー。絵画と物語が融合した独特の作風は「図像学ミステリー」と呼ばれ、一躍読書界の注目を集める
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kircheis
314
★★★☆☆ 飛鳥部さんの作品の中では、展開が王道本格に近く個人的には好み。ただ余りにもフェアプレー精神が強いため真相は序盤で推測できてしまう。それ故に終盤の多重推理が茶番ぽくなってしまうのが残念。 しかし、単なる本格推理にとどまらないのが飛鳥部作品の魅力であり、事件に関わった者たちはどんどん狂っていく。ドグラマグラ感のある終盤の展開は良かった。 また、これまでの作品では魅力あるキャラの無駄遣いが目立っていたが、本作ではしっかり見せ場があって嬉しい。植杉と山瀬のバトルとか小ネタが楽しい笑2024/01/23
W-G
186
面白い。もっと面白く出来たのではと残念に思う気持ちも大きい。かなり盛大でインパクトのある死体劇場だが、そこに至るまでの100ページ近くが、いまいちサスペンスに欠けるせいか、盛り上がりを削がれる。発見時の狂騒も後出しする事で熱を失ったような。。むしろダンス・マカブル等の蘊蓄を謎の手紙に絡めて、死体発見前に持ってきてくれた方が、意欲的に読めた。そういった物語の構成を組み換えるだけで犯人の意外性も随分変わると感じる。しかし、あとがきでは、コンパクトに纏める事も狙いの一つであったようだ。それはそれで成功している。2016/09/03
nobby
91
まず殺意満々の狂人達に視点変えながら描かれるのは、聖者殉教の絵画に見立てて投げ出された惨殺死体群。それは悪戯まがいに届けられていた手紙で示されていて…もう読み出してワクワク止まらず!二章の事件調査は持田目線で語られ分かりやすいが、飛鳥部さんならではの蘊蓄がちょっとスピード感を緩めてるかも…それでも、なるほどな伏線は押さえてあり爽快。ラスト、真相はやはり二転三転して明かされる。狂気や背徳ばかりの背景も健在。個人的に探偵役佐井のキャラがいい!シリーズ化してほしい位(笑)2016/11/22
HANA
61
腸を引き出された死体、歯を抜かれた死体、乳房を切り取られた死体…新設美術館の建立式に陳列された殉教者をなぞる様な死体の数々。読んでいて初めに思った事は、何と著者の作品が普通にミステリとして読めるという事。いや著者の作品って何時も違う方向に走り出すイメージあるから…。例によって登場人物の大多数が奇人変人の類でありますが、本作に限って言えばそれが巧妙な目隠しになっていて、さりげなく置かれたヒントから目を逸らさせる構造となっています。手に入りにくい一冊ですが、著者の作品に触れるには最適の一冊ではないでしょうか。2025/01/09
オフィーリア
54
退廃的で怪奇色増し増しな大好物のミステリ。宗教画に見立てられた壮絶な猟奇死体劇場で開幕した物語は人格破綻者達と芸術の蘊蓄に彩られる。意外と真面目に(失礼)ミステリしながらも、狂気と背徳に塗れた狂人の論理を爆発させてくれるブチ上げなラストに大興奮な1冊。2025/04/04