出版社内容情報
山本 七平[ヤマモト シチヘイ]
著・文・その他
内容説明
「百人斬り競争」「日本刀神話」といった「虚報」が事実として通用するのはなぜか。実際の戦場で兵隊はどのような生活をしていたのか。員数主義、事大主義、兵器や補給等、自身の従軍体験から日本軍という組織の実態を分析し、数々の戦争伝説を粉砕したノンフィクションの傑作。
目次
ロッド空港事件と内務班
残飯司令と増飼将校
戦場のほら・デマを生みだすもの
「トッツキ」と「イロケ」の世界
ジャングルという生き地獄
戦場の「定め」と「常識」
軍人より軍人的な民間人
扇動記事と専門家の義務
すべてを物語る白い遺髪
不安が生み出す「和気あいあい」
「親孝行したい」兵隊たち
著者等紹介
山本七平[ヤマモトシチヘイ]
大正10(1921)年、東京生まれ。青山学院高等商業学部卒業。昭和33年山本書店を創立。その後精力的な執筆活動に入る。平成3(1991)年12月死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
17
○面白かったです。戦場にいった人しかわからない感覚や心理、現実が伝わります。山本さんはニュートラルに淡々と振り返っているように感じられるので読みやすいです。2024/02/14
かっさん
3
私の中の日本軍 #読了 #山本七平 さんの著書 百人斬り競争という新聞記事の批判を題材にしながら、自身の従軍経験をふまえつつ日本軍人のリアルな心理を描き出す。一般に言われている軍人のイメージや通説の裏にあるものが、生々しく切実に伝わってくる。日本軍人のイメージを根底から変えさせられる。2023/03/15
さえもん
2
戦争に限らず我々はいかに観念だけで様々なことの話をしているだろう。何も実体験が伴わないのに観念的な言葉だけで議論した気になっている。実に虚しい。 著者は、一つ一つの言葉を自分の体験を基に丁寧に説明しようとしていて、言葉の恐ろしさを痛感している人なのだなと感じた。 「‥言葉が後に、日本の軍人の精神構造を逆に規制していき‥」という箇所は非常に興味深い。言葉を話すことは、単に文字を音声化しているだけではなく、それがそのまま思想なのだということを著者は分かっている。下巻を読むのが楽しみだ。2023/01/25
Lieu
2
他人を犠牲にしてもみずからの過誤を認められない人間の業の深さ。「百人斬り」記事がフィクションであることを「証明」していないと批判する人もいるかもしれないが、そもそもこの記事の真偽を決定する証拠・証人がないので、そう批判するのは「悪魔の証明」に与することとなってしまう。記事への批判に比して著者自身の体験談が多いのも、みずからの軍隊経験をもとに記事の記述の奇妙さを一つ一つ突いてゆくほかに方法がないからだ。その筆致は、推理小説のようにスリリングであると同時に、本当の戦争を知る者としての強い義憤が感じられる。2022/09/05
teitowoaruku
1
百人斬り競争とそれによる処刑に関して言えば、当事者の役職などを考えると筆者の言うように話が盛られ、かつ書くべきことを書かなかった結果であるように思う。まあ嘘くさいけど、新聞に載ったくらいだからそれっぽいことはやったんだろ的な。問題は、そういう噓くさい記事が私が勉強した教科書にあったことかな。伝説はこうして作られるという筆者の言葉が分かる気がする。2024/05/21