内容説明
日本人にとって天皇とは何か。戦後民主主義という欺瞞をはらんだ世にあっても、国民統合の「象徴」たらんと努めてきた昭和天皇の姿を、著者は畏敬と感動を込めて語る。「新編」では、平成の新たな世に天皇はいかにあるべきかを真摯に直言した二編を追加。誰よりも天皇を想ってきた江藤淳、会心の評論集。
目次
第1部 崩御、その哀しみ(国、亡し給うことなかれ;遺された欺瞞)
第2部 御不例、その不安(激動の昭和史から;意義深い新年を迎えて ほか)
第3部 視点、そのあとを望んで(対談)(昭和天皇とその時代―対談者 井尻千男(日本経済新聞編集委員)
国と王統と民族と―対談者 市村眞一(京都大学教授) ほか)
第4部 「平成」への問いかけ(二つの震災と日本の姿;福澤諭吉の『帝室論』)
著者等紹介
江藤淳[エトウジュン]
1932年、東京生まれ。文藝評論家。慶應義塾大学英文科卒。在学中の56年に『夏目漱石』を上梓。58年に『奴隷の思想を排す』、59年に『作家は行動する』を発表し、評論家としての地位を確立する。99年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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フォン
1
昭和末期から平成にかけて書かれた江藤淳の天皇論を纏めた一冊。昭和天皇への熱い思い。象徴天皇制への違和感。期せずして自らが皇室の外戚になったことへの戸惑い。書中の皇室は国民に愛されようとする必要はないという江藤の論は極論だが、一方で我々国民は天皇陛下、皇族方の計り知れない日本国、国民に対する御努力をまるで当たり前のものの如く、享受しているのではないかと昨今、思ってしまう。「『象徴天皇制』とは、そもそもはじめから、すでに破れ目を無惨に露呈した制度であった」という江藤の予言めいた主張が実現しないことを願う。 2019/06/07