出版社内容情報
「欧米とアジア」「文明と土着」といった相反する価値観に引き裂かれた近代日本。その矛盾を一身に背負った西郷隆盛という謎に迫る。
西郷という近代日本最大の謎
「欧米とアジア」「文明と土着」といった相反する価値観に引き裂かれた近代日本。その矛盾を一身に背負った西郷隆盛という謎に迫る。
内容説明
西郷が日本人を惹きつけてやまないのはなぜか?明治維新の「最大の立役者」にして、明治政府に背いた「逆賊」というパラドクス。近代日本の矛盾を一身に体現した西郷隆盛という謎に迫る。
目次
西郷隆盛の反動性と革命性
西郷隆盛と南の島々―島尾敏雄氏との対談
西郷隆盛と征韓論
西郷どんと竹内さんのこと
田原坂の春
日本の近代化と西郷隆盛の思想―安宇植氏との対談
西郷隆盛の謎―毛利敏彦『明治六年政変』にふれて
著者等紹介
橋川文三[ハシカワブンゾウ]
1922年‐1983年。長崎・対馬生まれ、広島で育つ。1945年東京大学法学部政治学科卒業。明治大学教授として近代日本政治思想史を講義。日本浪曼派に惹かれた自らの精神史の究明を通じて、戦後、天皇制批判とともにタブー視されていた戦前の日本浪曼派、反対近代思想、右翼思想、農本主義の検証・再評価を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sasha
10
西郷さんを引き立ててくれた島津斉彬と西南諸島への流刑。この部分を重要視しないと西郷さんは語れないのかもしれない。斉彬の死後、流刑された島で見た風景が後の西郷さんに影響を与えているとの論は面白い。でも、実に不思議なお人との印象は変わらないんだよな。明治維新の立役者、でもその明治政府に背いたお人。若き日の明治天皇は西郷さんをどう感じていたのか気になるが、手掛かりになる資料はないんだろうな。西郷さんは不思議なままでいいのかもしれない。だって、お星様にまでなったお人なのだから。2018/04/20
NY
2
西郷隆盛は、西洋の猿まねではない日本の近代化のビジョン、とりわけ、東アジア的価値に基づき、日中韓が連帯的な関係を構築しながら近代化を進める可能性を秘めていた。このビジョンをその後少しでも採用できていれば、日本の近代化はやや違うルートをたどり、ひいては太平洋戦争も避けられたのではないか。そのような、著者の直感と期待感はよく理解できた。西郷は単なる封建制の残滓でもなく、後の韓国併合につながる侵略主義者でもないだろう。2018/01/14
ダイキ
1
橋川文三は『日本浪曼派批判序説』を読んだ際、保田與重郎の「毒にイカレた」といった、軽薄かつ無責任な口ぶりが鼻に付いて敵わなかった。幸い本書にそのような軽薄さはなく、「民約論を泣き読みつつ、剣を取って薩軍に投じた」宮崎八郎を起点として、帝国主義や侵略といった負の印象とは別格の存在に位置づけられた西郷観は、かつて批判した保田與重郎の西郷観と殆ど通底するものであり、それが橋川にとって回帰だったのか、戦後も保持され続けていたものなのか私には判らないが、以前嫌悪感を覚えた橋川に改めて興味を抱かされる一冊となった。2024/12/17