出版社内容情報
自然の底知れぬ恐しさ、火山観察に私財をなげうつ一介の郵便局長、そして卑小な無頼漢が織りなす大迫力表題作のほか傑作五篇収録
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スター
36
1960年代から1970年代にかけて発表された読切短編集だが面白かった。 個人的には、表題作の『火の山』が1番良かった。舞台は太平洋戦争中の北海道。度重なる地震が勃発し、地元の郵便局長が、地殻変動の様子をスケッチする事になる。 昭和新山の話だが、昭和新山の事を全然知らなかったので、興味深く読んだ。2021/08/18
AICHAN
28
再読。表題作、「もの憂げな夜」「サロメの唇」「雨のコンダクター」「山棟蛇」「レボリューション」を収録。表題作は昭和新山の隆起を精密に記録した壮瞥村(当時)郵便局長の三村正夫の事実の物語を核としたフィクション。なかなかの力作。他の短編は、「レボリューション」を除いて手塚治虫にしては構成が拙く、オチも甘い。2021/12/09
国士舘大学そっくりおじさん・寺
26
手塚治虫の大人漫画短篇集。表題作は昭和新山を研究した三松正夫を描いたもの。三松が亡くなった1年後くらいに描かれた漫画である。私財を投じて研究した人格高潔な三松と対比するように、悪事を働くゴロツキを主人公に据えたのは素人の私が見ても上手いと思う。三松に心酔していくゴロツキによって三松の立派さが浮き彫りになる。ただし解説の池澤夏樹によってこの漫画の凡ミスは指摘されている。一篇だけ時代劇がある他は、昭和という時代の空気が濃厚な漫画ばかり。昭和って戦国幕末に匹敵する時代だったのだよなぁ。さすが手塚治虫。2015/01/27
Takao
3
1995年6月10日発行。「火の山」(1973)、「もの憂げな夜」(1973)、「サロメの唇」(1972)、「雨のコンダクター」(1968)、「山棟蛇」(1972)、「レボリューション」(1973)の6編を収録。巻末の解説で池澤夏樹は、表題作を取り上げ、手塚漫画の映画的手法について論じているが、確かに映画の一コマ一コマのような場面展開に引きこまれる。戦前の日本軍の侵略を背景として戦後の経済的な「侵略」をテーマとした「もの憂げな夜」、ベトナム反戦時代のアメリカを舞台とした「雨のコンダクター」が印象に残った。2016/07/17
みのにゃー
2
処分前の再読。短編集。表題作は、昭和新山の噴火による山の変化を克明に記録した三松氏の話。フィクションと実話が混じってぐいぐい読ませる。政府の対応がいいとこ取りで腹が立つ。2019/04/16
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- 和書
- 煙が目にしみる