内容説明
母子家庭で育つ小学五年生の椎名きさらは、母親から罵倒され、食事を抜かれても躾だと信じていた。周囲から「虐待だ」と指摘されるまでは。一方、神奈川県警の真壁は風俗店オーナーの刺殺事件を捜査。きさらの母親を疑うが、娘と一緒にいたというアリバイを崩せない。行き詰った真壁は、少年事件が得意な仲田に協力を仰ぎ―。
著者等紹介
天祢涼[アマネリョウ]
1978年生まれ。『キョウカンカク』で第43回メフィスト賞を受賞し、2010年にデビュー。13年『葬式組曲』が第13回本格ミステリ大賞の候補作に。同書に収録されている「父の葬式」は第66回日本推理作家協会賞(短編部門)の候補作にも選ばれた。なお、本書は書評家の細谷正充氏が選考委員を務める第3回細谷賞に選出された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
146
シリーズ第2作のテーマは貧困と虐待の連鎖。貧しい家庭で親に愛されず育った子はそれが愛情と思い込み、自分が親になっても同じ行動をとってしまう。必死に抜け出そうとあがいても成功する者はわずかで、却って惨めな状況に転落するばかりだ。そんな犯罪に巻き込まれた少女を救おうと奔走する仲田蛍と真壁だが、さらに救いのない真実が明るみになってしまう。自己責任という言葉で安易に片付けるのは、不快なものを見たくない者の傲慢でしかない。「追い詰められたら誰でも似たようなことをしてしまう」ほど、人は弱い存在なのだと思い知らされる。2024/02/17
itica(アイコン変えました)
64
シリーズ2。「希望が死んだ夜に」で登場した真壁、仲田捜査コンビ再び。殺人事件の容疑者としてある女が浮かび上がるが、娘の証言でアリバイが成立。しかしその娘は母親に虐待されている疑いが持たれる。果たして娘の証言は真実なのか。貧困母子家庭、虐待そして殺人と滅入るような暗い話だ。終盤に事実が明らかになると、最初はすんなり呑み込めなかった。何がどうして、こうなった?と頭の中は混乱状態だ。これは見抜けと言う方が無理だろう。気になるストーリーだが、余りにややこしいのは苦手。 2024/11/13
坂城 弥生
44
読み終わってからタイトルを見るとより切ない、、2024/01/08
よっち
32
母子家庭で育って、母親からの虐待を躾だと信じていた小学五年生の椎名きさら。一方、風俗店オーナーの刺殺事件を捜査する神奈川県警の真壁がきさらの母親の容疑を疑うようになってゆくミステリ。自らが傷ついても懸命に母親をかばい続けていたきさら。殺人の容疑者として警察に疑われるものの、娘と一緒にいたというアリバイを崩せない行き詰まった状況で、少年事件に関わる仲田に協力を依頼する真壁。きさらが状況を自覚して追い詰められてゆく中で、明かされてゆく構図にはやられたと思いましたが、同時にやりきれなさも感じてしまう結末でした。2023/09/27
おうつき
24
本格ミステリとしても、児童虐待というセンシティブな問題を扱った小説としても、題材に真摯に向き合っているのが伝わってきた。途中の描写は読んでいて辛かったが、現実にはこれ以上に酷いことが起きているのだと思うと、胸が張り裂けそうになる。ミステリの核となる仕掛けには途中で気づいてしまったが、それ以上の驚きがその後に待ち受けていて驚かされた。2024/06/18