内容説明
祖母は、父のせいで母が死んだと責めるが、父は何も語ろうとしない。ルーは、両親の過去を調べ始めた。ふたりはどのように出会い、母はなぜ死んだのか。父の身体に刻まれた、12の弾傷に隠された秘密とは?だが、過去の因縁が父娘に忍びより…。繊細な自然描写と骨太な犯罪小説が融合した、圧巻のミステリ。
著者等紹介
ティンティ,ハンナ[ティンティ,ハンナ] [Tinti,Hannah]
マサチューセッツ州セーラムで育つ。書店や出版社、文芸エージェンシーに勤務し、2002年に文芸誌One Storyを創刊、14年にわたり編集長を務める。05年、短編集ANIMAL CRACKERSで作家デビュー。09年に発表した二作目THE GOOD THIEFで全米図書館協会のアレックス賞ほか多数の文学賞を受賞し、話題に。本書は三作目で、18年のエドガー賞最優秀長編賞の候補になった。ブルックリン在住
松本剛司[マツモトツヨシ]
和歌山県生まれ。東京大学文学部卒業。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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タツ フカガワ
46
読んでいる最中ずきずきと“痛み”を感じる小説でした。たとえば、バスルームに亡妻の思い出の品々を飾り付けるホーリーの喪失感。ルーに投げつけられた母の死に「あいつが殺したんだ。あんたの父親が」という祖母メイベルの言葉など精神的な痛みもあれば、ホーリーがアウトローな暮らしの中で受けた銃弾の痛みもある。なかでも12番目に受けた「銃弾#12」が白眉! 薄幸な少女の物語にも弱いけれど、ホーリーのように不器用な男のハードボイルドな生き方も好感。余韻も深くいい小説でした。2023/06/02
Shun
30
上巻からの続き。12の弾丸の傷跡にはそれぞれエピソードがあり、それらを追うことで現在の寡黙でタフな父親がどのように形成されていったかが分かります。そして異様な数の弾丸を受けた訳には当然犯罪が絡んでおり、彼がこれまで何をやってきたのか知ることになるが不思議と嫌悪感は膨らまない。それには妻と出会い娘が産まれ、そして幼子だった頃の娘に対する彼の眼に紛れもない愛情を感じ取れるからかもしれません。本作は犯罪小説であり家族小説でもある。父と娘を見ていれば感じてくる、二人の関係性にいつの間にか行為を抱いていることを。2023/06/28
おうつき
18
過去を巡る物語は現在にまで追いつき、父娘に襲い掛かる。不器用な親子関係にじんわりとした温かみを感じ、救いのある結末であって欲しいと願わずにはいられなかった。映像化してくれないかなと思う。2024/03/17
てっちゃん
5
ミステリーだとか、ハードボイルドだとか言ったジャンルを超えた傑作。父娘の人生が収斂してゆくのが、とてもスリリングで心地良かった。2023/06/05
motoroid
2
ハードボイルドと西部劇、ジュブナイルなどいくつもの物語が絡み合った小説でした。大満足でした。2023/07/15