出版社内容情報
家政婦の姉とラブホテル勤務の妹、職人気質のクリーニング屋と常識外れの女性客…日常のやりとりから生れる違和感が楽しい中篇集。
内容説明
布団屋の民子が入院中、向いのふぐ屋のおかみさんが駐車場の猫に餌をあげているらしい。やがてふぐ屋の差し入れを食べた夫が体調を崩し、猫が姿を消し…。家政婦をする姉とラブホテルの受付をする妹、職人気質のクリーニング店主人と常識外れの女性客。何気ないやりとりから生れる違和感がクセになる愛すべき7篇。
著者等紹介
嶋津輝[シマズテル]
1969年東京都生まれ。2016年、「姉といもうと」が第96回オール讀物新人賞を受賞。18年発表の「一等賞」が、その年のベスト短篇を集めた日本文藝家協会編『短篇ベストコレクション 現代の小説2019』に収録された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
252
表題作含む7篇の短篇。どの話もね、小ぢんまりとした毎日と言うか、内輪話って感じなのね。特に劇的なドラマも無い、何処にでもありそうな日常を過ごしています。しかしながら、どれ一つとして同じものは無いって事なのですかね。至極当たり前過ぎる事ですが。ちょっと変わってはいるかも知れないけれど、何処かには居そうな登場人物の皆さん。また、日々は移ろいながら過ぎますね。だもんですから、話が終わった後の余韻もあり、この後どうなるのかな。こういう風になったら良いのにな等々、色々妄想してしまいますね。愉しいですね( ¨̮ )。2023/08/24
みかん🍊
77
改題されて文庫化の『スナック墓場』だったとはタイトルに騙された、とはいえすっかり忘れてて普通に読了したが改題して装丁も変更っていうのはやめて欲しい、普通の人々の何気ない日常ではあるが、普通の人などはいないくせがあったりそれぞれの事情や思いを抱えて生きている、最初は不穏な雰囲気を醸し出してはいるが最後は読後感良く終わる、しかしカシさんは何者かとかふぐ屋はどうなったのかとか疑問は残ったままだった。2025/04/16
ふう
66
帯に「こんな幸せな小説、ほかには見つからない!」とありました。幸せな気持ちになれることを期待して手に取った短編集。1話目の「ラインのふたり」でどんな幸せなんだろうと不安になりましたが、最後の場面で何とも言えない温かい風が吹き、そこだけ2回読み返してしまいました。あとの話も、多少癖のある人は登場しても、悪意のないやさしい日常が描かれています。どう受けとめたらいいのかわからない場面もありましたが、悪意のない人々の、自分の思いを大切にした生き方に、確かに小さな幸せをもらいました。ほかの作品も読んでみます。2024/10/14
エドワード
44
古本屋さんの掘り出し物。森絵都さんが解説している。愛すべき変人たちの姿、と書いて、嶋津さんの「普通ということにはこだわりました。」というインタビューに椅子から転げ落ちそうになった、という文章に爆笑する。確かにごく普通の人々の日常の機微だ。工場での単純労働。クリーニング店へ来る女性。両親を亡くした姉妹。米屋の母と娘。さびれた商店街。そんな中での、人々の表情や、目線や、言葉のやりとりの妙味。イヤなヤツにも優しさがある。いい本だった。「山さんこと露口茂ばりに渋い」の比喩が嬉しい。昭和は遠くなりにけり、だ。2023/05/14
アイシャ
41
独特の雰囲気を醸し出す7編。どの作品もとても普通に見えて、じつは個性の強い人たちを描いている。その根底にあるものがじわっと温かい。最初の『ラインの二人』で惹きつけられた。少し乃南アサさんの小説を思い出した。前科はないけど。最後の落とし方がとてもぐっと来た。そして『姉といもうと』幸田文の『流れる』が好きで女中になるのが夢という姉。私もこの小説が好き。指の欠損したいもうとは知り合いのラブホテルの受付をしている。その仕事を受けた理由も好きだ。淡々と日常を生きていく二人の距離感もいい。他の作品もとてもいい2024/03/01