出版社内容情報
能役者の家の長男・剛は15歳で藩主の身代わりとなる。弱小藩の決死の謀策、友の遺した言葉の謎とは?大感動、唯一無二の武家小説。
内容説明
切り立った岩の上で独り稽古を積む、藤戸藩お抱えの道具役(能役者)の長男、屋島剛。藩主の身代わりとして江戸城に入り、貧しい藩の命運を握る「能」を使った秘策を授けられる。巨大な存在にその身ひとつで挑む15歳の剛は「想いも寄らぬことをやる」決意をした。謎と謀、美と畏れ―唯一無二、感動の武家小説。
著者等紹介
青山文平[アオヤマブンペイ]
1948年神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学第一政治経済学部経済学科卒業。経済関係の出版社に18年勤務、経済関係のフリーライターを経て、2011年『白樫の樹の下で』で第18回松本清張賞を受賞。2015年『鬼はもとより』が直木賞候補、第17回大藪春彦賞受賞。2016年、『つまをめとらば』で第154回直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Y.yamabuki
23
藩のお抱え能役者の長男、剛は藩主の身代わりとして江戸に入る。能を手段に「あの御方」(将軍)に近付き、果たしてどうやって藩の内政を豊かにするのだろうか?と訝っていたら、まさかの衝撃の手段に息を飲む。最後の究極の決断。見事なストーリー(計画)を美しくやり遂げる。胸を打つラストに何とも言えない余韻が残る。終盤、剛は友の保の言葉「能はやさしい」の意味を理解する。「…生きとして生けるものへの、尽きることのない肯定。それが能を能にしている」難しい、難しいけれどほんの少し能が分かった気がした。今度じっくり観てみたい。2022/05/10
tomoka
9
能の知識は皆無のなか読み始め、途中、能についてググりながら読み終わりました。青山さんの文体が好きで『この言い回しが好き、ここの表現がいい』って思うところがたくさんありました。文中何度も出てくる「要る話をするときは要らぬ話から入る」これも妙に腑に落ちる表現で好きです。2023/01/11
coldsurgeon
8
能という洗練された、研ぎ澄まされた美を追求する芸術を背景に、とても奇抜なはかりごとの顛末を記した物語である。江戸末期、小国の下級武士の息子と生まれ、能を舞うことを生業とする少年が、藩主の身代わりとなり、小藩の命脈を保ち、力を蓄えさせようと画策する奇抜なストーリー。藩主の付き合い、能の舞われる仕組みなど示され、興味深く、楽しく読むことができた。所作の美しさは、能を舞うためにあったのかもしれない。能を美しく舞うために、舞台と日々の暮らしに境目があってはならz、美しく居ることが求められたことから類推できる。2022/03/02
かーな
5
能についてまったく知識がないのですが、最近犬王というアニメーション映画のを観たのとつながって多少イメージできて大変面白く思いました。 最後は泣き…ですよね2023/11/16
うーちゃん
5
藤沢周平は駄作がないことで有名だったが、青山文平は藤沢以上に駄作がないうえに、新作ごとに新たな分野に挑戦している。今回の新分野とは舞台芸能としての「能」で、能のことを詳しく研究しているのがよく分かる。あえて不満を言えば、私が無知のせいで膨大な情報を処理できず、ついて行けないところが散見された。もう少し咀嚼して欲しかったとは思うものの、これだけハイレベルで面白い時代小説を読ませてもらったのだから文句は言えまい。最後の一節が特に見事で、書かれていない未来がどうなるのかが見え、安堵と悲しみに同時に襲われた。2022/08/30