出版社内容情報
旅と酒の歌人牧水は恋の歌人でもあった。若き日を捧げた女性との出会い、疑惑、別れを秀歌を交えて描いたスリリングな評伝文学。
内容説明
白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ―若山牧水は恋人・小枝子との身も心も激しく燃える恋のさ中、どんな思いでこの歌を詠んだのか。俵万智が牧水の歌を確かな鑑賞で読み込み、恋愛を鮮やかに蘇らせる。「牧水の恋」そのものが、ひとつの生き物のように感じられる、と堺雅人氏も絶賛の画期的評伝。
目次
幾山河越え去り行かば
白鳥は哀しからずや
いざ唇を君
牧水と私
疑ひの蛇
わが妻はつひにうるはし
わかれては十日ありえず
私はあなたに恋したい
酒飲まば女いだかば
眼のなき魚
わが小枝子
若き日をささげ尽くして
エピローグ わすられぬ子
著者等紹介
俵万智[タワラマチ]
1962年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部卒。87年刊行の歌集『サラダ記念日』で翌年、第32回現代歌人協会賞を受賞。以降、幅広い執筆活動を行い、96年より読売歌壇の選者を務める。歌集に『プーさんの鼻』(第11回若山牧水賞)など。2004年、『愛する源氏物語』で第14回紫式部文学賞、19年に『牧水の恋』で第29回宮日出版文化賞特別大賞、21年に歌集『未来のサイズ』で第36回詩歌文学館賞、第55回迢空賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
禿童子
39
「白鳥は哀しからずや海の青空のあをにも染まずただよう」をはじめとして愛唱歌の多い若山牧水だが、実生活では大変な恋愛に翻弄されていたことを知った。明治40年早稲田大学の3年生に始まった園田小枝子との恋がその後の牧水の人生を決定づける、牧水の名歌の尽きせぬ源泉になった。俵万智は小枝子の側の見方から若い牧水の赤裸々な姿を描いている。恋に破れたのちに妻・喜志子と結ばれて家庭の幸せを得ても寂しさから逃れられなかった。一読後、「幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ 今日も旅ゆく」も違った余韻を感じる。2021/10/05
ピロ麻呂
31
歌人若山牧水の恋愛遍歴を、数々の短歌とともに解説。歌の訳も分かりやすく、牧水に影響された自身の歌も紹介されてます。それにしても牧水を虜にした小枝子ってスゴい😆人妻でありながら、二股をかけ、牧水に貢がせる魔性の女。でも、そんな苦しい恋愛が短歌の糧になったと思う。「はじめより苦しきことに尽きたりし 恋もいつか終わらむとする」恋の終わりっていつなんだろ?2021/08/28
ホシ
26
初恋を主題とした俵万智による若山牧水の評伝。脳内を何度も「三四郎」「ストレイ・シープ」がリフレインします。寝込みを襲われまいと寝たふり(!?)をする小枝子。日向の田舎から出てきた純朴な牧水は小枝子の「生殺し作戦」に手も足も出ません。渾々と湧き上がる欲求…そりゃぁ、歌づくりに昇華せざるをえんわ(笑)。「あなたはよっぽど度胸のないかたですね」…小枝子の声が聞こえてきそう。だからこそ、小枝子と結ばれた夜の牧水の喜びと来たら!そして、小枝子の秘密を知った牧水の驚きと来たら!他人の恋バナの何と妙味なることか(笑)2022/01/25
ひよピパパ
17
宮崎が生んだ歌人、若山牧水の恋(人妻との恋!意外とドロドロ!)を、歌人・俵万智が活写した力作。本書のアウトラインは伊藤一彦の「解説」がとても明解。先に「解説」を読んでもいいかも。牧水によって詠まれたそれぞれの短歌が俵の見事な解釈により他の短歌と有機的に繋がりを見せ、その折々の牧水自身の心情を見事に浮き上がらせている。その傍証として、現存する手紙等の資料や、なんと俵自身の短歌までを用いているのが面白い。この夏、地震のため見送ったが牧水の故郷・宮崎日向への思いは募る。2024/08/14
春色
12
「白鳥は悲しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」中学だったか高校だったか、国語の授業で鑑賞した若山牧水の有名な一首。美しい孤独のいろ、と気に入っていたがその背景にこのような我を無くすような恋愛があったとは。短歌鑑賞に馴染みがなくとも著者俵万智さんの解説や考察が橋渡しをしてくれる。2024/07/29