内容説明
若い主婦が自殺未遂をして音信不通となった。その裏で起きていた陰惨な事件とは?(絶対零度)。近所に住む主婦の依頼で出かけた結婚披露宴で、杉村は思わぬ事態に遭遇する(華燭)。ある奔放な女性が持ち込んできた、「子供の命がかかっている」問題とは?(表題作)。探偵vs.ちょっと困った女たちの事件簿。
著者等紹介
宮部みゆき[ミヤベミユキ]
1960年生まれ、東京・深川育ち。法律事務所勤務を経て、87年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。以降、「龍は眠る」で日本推理作家協会賞(92年)、「本所深川ふしぎ草紙」で吉川英治文学新人賞(同年)、「火車」で山本周五郎賞(93年)、「蒲生邸事件」で日本SF大賞(97年)、「理由」で直木賞(99年)、「模倣犯」で毎日出版文化賞特別賞(2001年)、「名もなき毒」で吉川英治文学賞(07年)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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馨
271
連作中編3作。杉村探偵のところに依頼に来る人たちの内容がもはや興味深いテーマばかりでした。結末もひねっていてさすが宮部みゆきだなと思いました。シリーズモノなのですね。1作めが1番良かったけど残酷だったな。人の言うことは片面から判断してはいけないね。 2022/11/14
まこみや
220
なんてシンメトリックな構成なんだろう。便宜上、AとBという対の鏡を置いてみる。Aは製作(成長)過程で歪んでしまった鏡である。そしてそこに映る歪んだ鏡像(思考)が事件の遠因となる。他方、Bの鏡は歪みのない正像を映し、Bと対になることでAの鏡のひずみ(狂い)を際立たせる。Aは(姉の優美/妹の佐江子/姉の美姫)であり、対してBは(弟の毅/姉の佐貴子/妹の三恵)である。言うまでもなく探偵の杉村三郎は、このような図式を透視する装置としての役割を演じている。以上、遊び半分にこの三作品に共通する透視図を考えてみた。2021/05/21
fukumasagami
182
前作で探偵として開業した杉村三郎シリーズ5作目。「絶対零度」「華燭」「昨日がなければ明日もない」3遍。彼は1篇目と3遍目では自らの探偵調査の過程もしくは結果によることで発生した殺人と向き合うことになる。殺人そのものを防ぐことができないが、犯した者の暗い闇に向き合い、付き添うことができる。人を呪うならば穴二つ、どこに陥穽があるのかはわからない。2021/06/27
Nobu A
163
数え間違いがなければ、宮部みゆき(上下巻等含む)著書24冊目。読み始めて「杉村三郎シリーズ」と気づく。5巻中「誰か」「希望荘」は既読で3巻目。最初の「絶対零度」が一番面白かった。と言うか、残り2編は個人的には尻窄み感が否めない。最初に関しては「母と息子の精神的圧力釜は高性能で、耐久性が高い」「カレーとコーヒーの芳香でも打ち消すことができない不快な臭い」「遅効性の毒のように、私の嘘への怒りがこみあげてきたのだろう」等、随所に散りばめた独特の言い回しが著者らしい。私には読書に粋なスパイス。残り2巻も読まねば。2023/09/13
エドワード
161
自殺未遂をした人妻。入院先の病院で面会を断られる彼女の母親。「絶対零度」は、女性を人間と思わない男たちが起こした鬼畜の所業。ここまでの傲慢と欲望には正直胸が痛い。「華燭」は同日に同じホテルで開かれた結婚式がともに破談となる顛末に杉村が巻き込まれる。同時に破談とは、偶然か、まさか?標題作はモンスターママのトンデモ依頼に辟易する杉村。ユーモラスに描きながら、次第に貧困家庭の闇へ向かう。杉村のとぼけた会話と冷静な観察眼が描き出す、ますます貧弱になる人情、世知辛い世情。宮部みゆきさん、健在ですね。次作も期待です。2021/06/16
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