内容説明
父・直家の跡を継いだ宇喜多秀家は、秀吉の寵愛を受け豊臣政権の中枢となる。しかし秀吉没後は、派閥争いや家中騒動に苦しみ、西軍の主力として臨んだ関ヶ原の戦いで壊滅する。敗走する秀家だが、彼が目指したのは、武士としては失格の場所だった―。心優しき秀才が、嵐世に刻んだ覚悟とは?傑作歴史長編。
著者等紹介
木下昌輝[キノシタマサキ]
1974年奈良県生まれ。近畿大学理工学部建築学科卒。2012年「宇喜多の捨て嫁」で第92回オール讀物新人賞を受賞。14年『宇喜多の捨て嫁』を刊行。同作は15年に第152回直木賞候補作となり、第4回歴史時代作家クラブ賞新人賞、第9回舟橋聖一文学賞、第2回高校生直木賞、第33回咲くやこの花賞を受賞した。19年『天下一の軽口男』で第7回大阪ほんま本大賞、『絵金、闇を塗る』で第7回野村胡堂文学賞、20年『まむし三代記』で第9回日本歴史時代作家協会賞作品賞、第26回中山義秀文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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岡本
113
宇喜多直家の子で五大老の宇喜多秀家が主人公。前作「宇喜多の捨て嫁」で描かれた通り、直家の手腕で何とか纏まっていた宇喜多家。直家亡き後、秀吉に振り回されながらも支えられて国を纏めていた秀家。しかし、秀吉亡き後に家康の介入もあり宇喜多家は崩壊の一途を辿る。そして家中の混乱が続く中起きてしまった関ヶ原の戦い。優しくも聡明な主人公が終始振り回される様子に戦国末期の混迷とした雰囲気を感じる。約50年過ごした八丈島に楽土はあったのだろうか。八丈島で見た秀家と豪姫の像を思い出す。2021/01/24
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
88
前作「宇喜多の捨て嫁」では直家を、この「宇喜多の楽土」ではその嫡男、秀家の生涯を描く。僅か11歳で家督を継承し、太閤秀吉に重用され豊臣政権の中核となった秀家。時代の流れに任せる事なく、流れに逆らい己の人生を全うした秀家。関ヶ原の戦に敗れ、50年もの長き間を流刑の地、八丈島で暮らす。そこに彼の楽土はあったのだろうか?前作に比べるとインパクトには欠けるが良作でした。★★★★2021/03/05
のり
80
直家公の跡を継ぎ、若くして宇喜多家当主になった「秀家」。毛利家との領地争いに「秀吉」に救済を求める。「前田利家」の娘で秀吉の養女、後に秀家の妻となる「豪姫」のはからいで豊臣政権の中枢に上り詰めるが、戦続きで兵も財政も困窮を極める。秀吉の死後、お家騒動や「家康」の企てで関ヶ原に敵として担ぎ出される。敗戦の将として八丈島に流されたが、信を全うした。民・人命をここまで大事にした大名も珍しい。2021/04/15
エドワード
36
宇喜多秀家。豊臣秀吉の家臣で五大老の一人だが、小説やドラマにあまり出て来ないのが不思議だ。歴史の見方は様々だが、ここでの秀家は石田三成に勝るとも劣らない西軍の重鎮である。前田利家の娘で秀吉の養女、豪姫を正室に迎える。朝鮮出兵で奮戦し、秀吉の死後勃発する徳川家康の権力簒奪に徹底抗戦する。風雲急を告げる人々の描写が鋭い。そして関ケ原。「それは天下分け目の戦いなどではなかった。圧倒的強者が、弱者にとどめを刺す掃討戦である。」の一文が印象的だ。死に損ない八丈島へ流罪となるが、豪姫との心の交流がせめてもの慰めだ。2023/05/28
ブルちゃん
24
宇喜多秀家は資料も少なく、謎が多いらしい。宇喜多騒動の発端は実際秀家が原因みたいだけど、この本では秀家は優しく真っ当な人という感じに書かれてた。自分自身の力に悩みながらも、関ヶ原では福島正則隊を引き受け奮闘した宇喜多秀家。それだけで充分かっこいいケド、盛り上がりはあまりない感じだったかな✨2021/08/10