出版社内容情報
僕たちは、同じ種族だ。
永遠に終わらない夜を生きていく種族。
のちに何件もの大規模テロ事件を起こし、
犯罪者たちの王として君臨する男、神山。
市民に紛れて生きていた彼を追う雑誌記者が見たものとは――。
強力な特殊能力を持って生まれてきた少年たちは、
いかにして残虐な殺人者となったのか。
『夜の底は柔らかな幻』で凄絶な殺し合いを演じた男たちの過去が
今、明らかになる。
内容説明
索条痕のない窒息死体が連続で見つかった。この殺人事件に、あの男は関与しているのか。雑誌記者が、あとを追う。特殊能力を持つ者たちが覇権を争う「途鎖国」でやがて犯罪者の王として君臨する神山が、闇に目覚める瞬間を描く(表題作)。傑作ダーク・ファンタジー『夜の底は柔らかな幻』へと続く鮮烈な作品集。
著者等紹介
恩田陸[オンダリク]
1964年宮城県生まれ。早稲田大学卒。92年日本ファンタジーノベル大賞最終候補となった『六番目の小夜子』でデビュー。2005年に『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞と第2回本屋大賞、06年に『ユージニア』で第59回日本推理作家協会賞(長編部門)、07年に『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞、16年に『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、17年に同書で第14回本屋大賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
162
「夜の底は柔らかな幻」のスピンオフでもあるこの作品。真紅の表紙がとても美しく、この本を手にしたい。まずそこに魅かれたこの作品。永遠に終わることのない、終りなき夜を生きていくしかない者達の苦悩。特殊な能力を持って生れてしまったが故の苦悩。そして能力を持たない者との間に生まれる相剋。800頁を超えても判然としなかった数々の謎があっけなく解決するこの作品。恩田さんが物量を投入しても描きたかったもの。それはこの作品世界にかける恩田さんの熱い思い、強い熱意。そして、恩田さんの深い愛情に触れることのできた作品でした。2021/09/03
yoshida
127
「夜の底は柔らかな幻」の前日譚。在色者それぞれを主人公にした短編集。「夜の底」では人間味に乏しかった、もしくは得体のしれなかった葛城晃や神山倖秀の内面が垣間見れる。「夜の底」を読了して間を空けずに読んだので、とても楽しめた。「夜間飛行」での葛城の意外な苦闘と人間らしさ。山を降りて以来の邂逅であろう葛城と神山。神山の圧倒的なイロに衝撃を受ける。標題作では神山が詩を読み上げた時に戦慄とカタルシスがある。そして沈黙していた神山が動き出す。非常に楽しめた作品。恩田陸さんにこの作品のシリーズを、是非執筆して欲しい。2020/11/02
SJW
110
「夜の底は柔らかな幻」のスピンオフ作品であることを知らずにこちらを読んでしまった。4つの短編から構成されるが、それぞれの関係が薄くどう繋がるのか読みながら気になっていた。やはり「夜の底は柔らかな幻」を先に読まないと面白さは分からなそうだった。2021/07/22
Ikutan
78
『夜の底は柔らかな幻』のスピンオフとは知らず読み始め、初めは、物語の設定に戸惑ったのですが、そこは、恩田さん、本編が未読でも、いつの間にか独特な世界観に浸ることができました。本編は特殊能力を持つ者たちが覇権を争う『途鎖国』を描いたファンタジー。その特殊能力故に精神を病むリスクも高いという。そんな『途鎖国』のタフな人たちに着目した四つのスピンオフ。どのお話も人物のキャラが際立っていてサクサク読めちゃいます。中でも、オネエキャラの軍勇司は、憎めないいい奴だったな。これは、本編も読まなくちゃ。2022/10/05
眠る山猫屋
62
感想難しいなぁ。本編を読み直したくなる。現代の物語(勿論、異世界だが)なのに薄暗い宵闇に包まれたような揺らぐ空気感に中毒してるな、自分。異能力者たちが点在しているだけで、世界はこうも暗く見えるものなのか。本編では比較的サブキャラだったバーのマスター軍勇司さんが生き生きしているエピソードが好み。数少ないまともな意識の保有者として描かれているからかな。2020/07/16