出版社内容情報
北町奉行所同心の小者を務める髪結い職人の伊三次を主人公に、オール讀物新人賞受賞以来、二十年近く著者が書き続けた人気作最終話。
宇江佐 真理[ウエザ マリ]
著・文・その他
内容説明
息子を授かった町方同心・不破龍之進は、仲間の反対を覚悟しつつある決断をする。一方、貴重な絵の具を盗まれた伊与太は、家族にも知らせず江戸を離れ―髪結いの伊三次と深川芸者・お文の恋から始まった大傑作シリーズ、感動の最終巻。子供を育み、年をとる。こうして人の世は続いてゆく。(『擬宝珠のある橋』収録)
著者等紹介
宇江佐真理[ウエザマリ]
昭和24(1949)年、北海道函館市生まれ。函館大谷女子短期大学を卒業。平成7(1995)年「幻の声」でオール讀物新人賞を受賞し作家デビュー。受賞作を含む連作集『幻の声髪結い伊三次捕物余話』で一躍注目を集める。12年『深川恋物語』で吉川英治文学新人賞、13年には『余寒の雪』で中山義秀文学賞を受賞。27年11月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
107
髪結い職人の伊三次と深川芸者・お文の恋から始まった物語は、いつしか伊三次が仕える北町奉行定廻り同心の不破友之進とその妻・いなみの物語になり、さらにその息子・不破龍之進とその妻・きいの物語になり、さらに不破友之進の娘・茜と伊三次・お文の息子・伊与太の物語となった。伊与太、友之進、きい、茜がどのような人生を歩むのかをもっと読みたかったのだがそれも叶わない。残念だが本作が未完の最終巻と了見するほかない。人とは、人の人生とはそのようなもので、一人ひとりの人生はけっして完結することのない物語だ。2019/05/29
ぶち
98
とうとう最後の巻となってしまいました。じっくりと堪能させてもらいました。 特に「擬宝珠のある橋」は、宇江佐さんらしい人情味あふれるお話でした。他の男と再婚したものの、蕎麦屋を営んでいた元義父の暮らしぶりを案じていた女性のために伊三次が一肌脱ぐのですが、清々しく、気持ちの良い結末でした。そこにある家族愛に、印象的な伊三次の台詞もあいまって、胸が熱くなります。 この家族以外にもたくさんの素敵な人々の人生に触れせていただき、宇江佐さんにありがとうとお礼を言いたいです。2022/01/28
ふう
98
20年近く続いたシリーズの最終巻。物語の中で、登場する人々も歳を重ねました。結婚し、親になり、祖父母になり…。日々の暮らしに起こる悲喜こもごものできごとに変わりはないけど、受けとめる側の心の持ちようは歳とともに変わっていきます。九つの物語はどれもめでたしめでたしの終わりではありません。やりきれなさも残るけど、その中でも少しだけ救いを見つけて折り合いをつけるしかない、人々のささやかな知恵で締めくくられています。悪は許せないけど人の弱さは許してあげよう、助けてあげよう。その方が自分も生きやすいから。物語の→2019/09/21
ふじさん
88
シリーズ14作目。不破龍之進の妻のきいの妻として母としての忙しい日々や偶然出会った人の事の顛末が語られる。龍之進の小者の増蔵の後釜に、元本所無頼派の首領で今は駄菓子屋を営む薬師寺次郎衛をするにことでの同僚との軋轢やその顛末。伊三次の息子の絵師の伊予太は、茜の紹介で出会った松前藩の御用絵師から貰った高価な絵具を同僚の絵師に盗まれたことをきっかけに、師匠の歌川国直の家を出て、北斎の紹介で信州で絵の修業をすることのなる。茜の複雑な心境に心が和む。この作品の脇役の人生が、物語を噤む。読んでいてほっとする。 2023/04/02
じいじ
80
著者・宇江佐さんが19年の長きに渡って精魂込めて書き上げた『髪結い伊三次』シリーズの最終巻を読み終えた。そして、いま痛感しました。この物語の主人公・伊三次は、宇江佐さんの理想の男性像ではなかったか…と。女房のお文は、この上ない亭主を摑んだと思います。このシリーズは、宇江佐真理の作家生活のすべてがつまった力作であり傑作だと言っても過言ではありません。いつか?このシリーズ15巻を携えて、山籠もりしたい気持ちです。2022/04/24