出版社内容情報
秀吉が利休に切腹を命じた理由は信長時代まで遡るものだった…八十四歳の作家が膨大な史料から真相をあぶりだす歴史ミステリー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アルピニア
63
秀吉と宗易(後の利休)の出会いから、利休が切腹するまで。このテーマを扱った作品の中では異色という印象。利休とは相容れなかった秀吉の「茶の湯」が見えてくる。特に心に残ったのは、朝顔一輪事件、黄金の茶席についての解釈。黄金の茶席を悪趣味として(だけ)とらえるのは、電気の光に馴れて暗黒の感覚を失った我々の間違い。その時の視点で判断しなくてはいけない。との言葉は、深く心に留めたいと思った。あとがきでは、夏目漱石の「草枕」の一節を引いて、「茶の湯」に対する読者の意識を問うている。私・・も「微苦笑」かな。2019/03/03
Noelle
8
純粋に面白かった。利休と秀吉の確執はよく語られているが、一味違う著者の解釈は地味ながら一面理解できる。なぜなら膨大な資料の読み解きから結論を引き出しているから。経歴からもその調査能力と茶道の知識の深さで、茶会資料から表の政治のこと、人間関係の離合などがこれだけ読み取れるとは驚きだ。信長から主を変えて秀吉の茶頭となった時から、遊びの茶を求める秀吉と、道を追求する利休との背反が始まったのか。朝顔茶会、黄金の茶室、木像事件などは表層に過ぎないと思えた。利休居士の名を好んでいなかったとは!晩年の渾身の作である。2020/07/07
さっと
5
秀吉と利休の出会いから蜜月、亀裂、対立、終幕までを時系列で丹念に追っている。タイトルからは本能寺三部作に連なるミステリーっぽさがにじみ出ているが、いたって正統派の歴史叙述で、極言すればお茶に対するふたりのスタンス、権力者と芸術家、武士と町人という立場や世界観の違いが大きいように思う。一種のステータス、コミュニケーションツールとした秀吉と、文化としてとことんまで突き詰めようとした利休。「闇」というよりは「澱」だね。わかりあえず譲らずお互い悪感情がどんどん積み重なってしまった感じ。まるで連鎖できないぷよぷよ。2021/11/26
まいど
5
恐らく加藤廣の遺作になる様な気がしているのは自分だけだろうか。 加藤廣の調査力、読解力、想像力に感服する事多々ありその作品の多くを読ませてもらい支持して来た。今回の利休への想いも並々ならぬものがあり今までの利休像から少し離れた利休を見ることが出来た。これぞ歴史小説だ。歴史小説故に多作が難しい事は解るが死ぬ前に出来ればもう二、三作書いてくれないものだろうか。2017/12/27
コウ
4
理由あって表紙買いしてしまった一冊。帯に『信長の棺』シリーズを匂わせる文言が――読んでないけどいけるか?!と強行突破。…大丈夫でした、今作のみでも楽しめました。ただ今作を純粋に【歴史小説】として読もうとするとかなり苦しいです。数多の茶人の残した茶会記を基に執筆されたようですが、この茶会記と執筆者の解説も随所にあることから、読み方を掴むのに苦戦。正直、私が楽しめたのは、読み方をやっと掴めたかも!と思った半分も過ぎた頃からでした…トホホ。まだまだ読書素人です。2017/11/22
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