出版社内容情報
刹那の欲望、嫉妬、別離、性の目覚め…。著者がこれまで一貫して描き続けてきた人間存在のエロス、生と死の根幹に迫る圧巻の短篇集。生と死とエロス――。著者の真骨頂!
刹那の欲望、嫉妬、別離、性の目覚め…。著者がこれまで一貫して描き続けてきた人間存在のエロス、生と死の根幹に迫る圧巻の短篇集。
「鍵」「木陰の家」「終の伴侶」「ソナチネ」「千年萬年」「交感」「美代や」の7編収録。
解説・千早茜
小池 真理子[コイケ マリコ]
内容説明
ピアニストの佐江は、教え子の少女のホームコンサートで、少女の叔父だという男と出逢う。音楽堂の暗い客席で、少女の弾くソナチネのメロディに合わせるように、佐江と男は視線を、指先をからませていく…(「ソナチネ」)。生と死とエロスを描きつづけた著者の真骨頂、7つの作品を収めた圧巻の短編集。
著者等紹介
小池真理子[コイケマリコ]
1952年、東京生まれ。成蹊大学文学部卒業。89年、「妻の女友達」で日本推理作家協会賞(短編部門)受賞。96年『恋』で第114回直木賞、98年『欲望』で島清恋愛文学賞、2006年『虹の彼方』で柴田錬三郎賞、12年『無花果の森』で芸術選奨文部科学大臣賞、13年『沈黙のひと』で吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
379
7つの短篇を収録。それは小池真理子の小説に限ったことではないのだが、すぐれた短篇小説は、わずか数十ページで人の半生を鮮やかに語る。特にそう思ったのは「木陰の家」と「終の伴侶」を読んだ後だった。私は、自分とは全く違う人生を追体験して生きたのだ。一方、表題作の「ソナチネ」は、官能小説である。描かれた行為としては、こっそりと太ももを撫でるというだけのものなのに、深くまで浸透する官能性を有している。また、「千年萬年」と「美代や」は性が併せ持たざるを得ない「業」の哀しみを淡々とした筆致で描き出す。2019/06/13
takaichiro
90
恋愛短編小説のレジェンド、小池さんの7短編集。作品は、恋愛、時に官能をフロントラインとして陰に死を纏う。人間が織りなす人生模様。怖さ、美しさ、やり場のない嫉妬や時の流れに薄らぐ衝動を編み込みながら、生を彩る日常を起伏のない自然体で描く。欲しいものが全て手に入るわけではない。それどころか奪われることも多い日常。それも全て味わい尽くすことが人生だと静かにつぶく作品たち。今回はトップバッターの「鍵」が良かった。不倫や死を語りながら、運命を大きく変える人との出会いに彩りある鮮やかな光をあてる。小池さんの真骨頂。2019/07/15
アッシュ姉
78
熟練の域に達した小池真理子さんによる大人向けの短編集。じっとりと絡みつくような円熟した味わい。特に印象的だったのは、孫がいる主婦がマッサージに目覚める「千年萬年」、すべてを知った息子の心中やいかに「美代や」。抑えきれない欲望、抗うことのできない本能、消えることのない嫉妬の炎。普段は理性で抑えていても、ふとしたはずみで燃え上がる。誰もがそうだとは思わないが、女はいくつになっても女であることに怖くなった。2018/01/19
Shoji
76
人生のたそがれ時を迎えようとしている男と女の恋物語集。色恋沙汰が決して綺麗ごとだけではないことを知っている、まさに酸いも甘いも一通り経験した男と女の物語。しかも、この本に書かれているのは婚姻関係外の恋物語だ。普段の生活や外見はもちろん仮面である。そんな小池真理子さんの書く、若くはない男と女の機微、もちろん大好きだ。2017/02/25
のり
68
7話の短編。共通のテーマとして、絡み合う「視線」と位置づけたい。男と女、女と男。危ういと解りながらも欲に溺れる。ドロドロと品に欠ける事情のはずが、小池さんの手にかかれば、それも有りかと納得するものがある。生きている以上、嫉妬や欲望は少なからず無縁ではない…「ソラチネ」「交感」「美代や」が良かった。2017/07/30