出版社内容情報
藤沢作品で不動の一位、苛烈な運命に翻弄されながら成長する少年藩士の姿を描いた傑作が、新たなカバー・文字の大きな新装版で登場。海坂藩普請組牧家の跡取り・文四郎、15歳の初夏から物語は始まる。
隣家のふくとの淡い恋、小和田逸平・島崎与之助らとの友情、突然一家を襲う悲運と忍苦――。
苛烈な運命に翻弄されつつ成長してゆく少年藩士の姿を描き、数多くある藤沢作品のなかで不動の人気ナンバー1を誇る「?しぐれ」が、文字の大きくなった新装版で登場。
時代を越えて読み継がれる、藤沢文学の金字塔。
解説・湯川豊(文芸評論家)
藤沢 周平[フジサワ シュウヘイ]
内容説明
「どうした?噛まれたか」「はい」文四郎はためらわずその指を口にふくむと、傷口を強く吸った。無言で頭を下げ、小走りに家へ戻るふく―。海坂藩普組牧家の跡取り・文四郎は、15歳の初夏を迎えていた。淡い恋、友情、突然一家を襲う悲運と忍苦。苛烈な運命に翻弄されつつ成長してゆく少年藩士の姿を描いた、傑作長篇小説。
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
昭和2(1927)年、山形県鶴岡市に生れる。山形師範学校卒。48年「暗殺の年輪」で第69回直木賞を受賞。「白き瓶―小説 長塚節」は、吉川英治文学賞。平成元年、菊池寛賞受賞、6年に朝日賞、同年東京都文化賞受賞。7年、紫綬褒章受章。9年1月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
148
以前から読みたかった藤沢周平の名作『蝉しぐれ』が新装版の文庫本となったので、この機会に読みました。藤沢周平を真面に読むのは初めてです。 現代の作家で言えば、葉室鱗に近いテイストです。トータルの感想は下巻読了後に。2017/02/20
kinkin
121
以前から気になっていた本作品・しっかりと堪能した。まずは文四郎と、ふくとの出会い。ふくの蛇に噛まれた指をとっさに吸うことになる。隣人である、ふくとの出会い。そして世之介や逸平との交友、一家を幸せから突き落とすかのような父の死、上巻全体を振り返ってみるとどのエピソードのダレずに、ぐいぐいと読ませてくれた。藤沢周平という人はどりらかというと市井モノを中心に読んでいたが、武家モノの面白さを教えてくれた。下巻はまだ体にれていない、とても待ち遠しい一冊だ。2023/02/04
じいじ
104
新装版が出たということで、8年ぶりに再読。上下巻に分かれて、活字も大きくなって読みやすくなった。ほのぼのとした若侍たちの春の息吹が、清清しくて読み心地がいい作品です。藤沢小説の読了50有余のうちでは、この『蝉しぐれ』が一番好きな作品です。《反逆の罪》を背負った父との今生の別れは、悔しくてやるせない思いで胸がつまります。「わたしの欲でなく、義のためにやったことだ…」と、重いひと言を遺して切腹した、父親の無念さは計り知れない…。一気に下巻に…。2021/07/15
びす男
100
純粋な少年藩士が、どう成長していくか。父の死や幼馴染みとの離別を乗り越えていく主人公の姿に、つい「強くなれよ、負けるな、がんばれ」と声をかけたくなってしまう。藤沢周平は、中学生の頃に大好きだった。主人公も、それを描く筆者の文章も、強さと優しさを持っている。没後20年ということで、手に取った。しばらく藤沢周平を読んでみて、優しい眼差しを学んでみたい。2017/01/29
mike
84
海坂藩少年藩士の文四郎。親友は女好きの逸平と秀才与之助。文四郎には隣に住むふくと言う想い人がいたが、彼女は江戸へ奉公に上がり藩主の側女となってしまう。文四郎の父は反逆罪の汚名を着せられ切腹し、その時から彼の運命が大きく傾いて行く。武勇に優れた彼は道場主から秘剣の伝授を示唆される。しかしそれには神社奉納試合で無敵の剣豪興津に勝つ事が条件だという。文四郎の行く末は?いざ下巻へ💨2024/03/17