出版社内容情報
樹海で失踪した息子の伝記の執筆を依頼された売れない作家・島崎の周辺で、次々に変事が。五つの文体で書き分けられた謎のモザイク!
折原 一[オリハラ イチ]
内容説明
8歳で児童文学賞を受賞し天才少年と呼ばれた小松原淳は、なぜ富士の樹海に消えたのか?母親の依頼で淳の伝記を書くことになった作家志望の島崎は、膨大な資料を読み、関係者に取材して淳の人生に迫るが、やがて不気味な“異人”の影が彼の周辺に出没するようになり…。著者畢生の傑作がここに復活!
著者等紹介
折原一[オリハライチ]
1951(昭和26)年生まれ。早稲田大学卒業後、編集者を経て88年に『五つの棺』(後に改作して『七つの棺』)でデビュー。95年には『沈黙の教室』で第48回日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
295
本屋大賞2018年発掘部門「超発掘本!」に選ばれたので、読みました。折原一、初読です。パラノイア叙情ホラーイヤミステリ、一気読みしました。著者版ホーンテッドマンションかも知れません。本書は面白かったですが、2016年11月30日以前に刊行された作品という選考基準ではあるものの、実際は25年前に書かれた作品の三次文庫(本書)を選ぶのは、疑問が残ります。機会をみつけて、著者の他の作品も読んで見たいと思います。2018/05/15
とろこ
92
面白くて一気読み。まるで、謎の万華鏡を覗き込んでしまったかのような感覚に陥った。どの伏線がどの状況に繋がっていくのか?この一文の背後には何が隠されているのか?依頼を受け、ある青年の伝記を書くことになった島崎。彼が、その青年の過去を辿っていくと、彼の周りでは、多くの不審死が起きていた。青年に付き纏う、異人の影。謎、謎、そして謎…。早く真相が知りたいという思いに急かされ、614ページを飽きずに読み切った。2018/05/16
ふう
88
筆者紹介の欄に叙述トリックを駆使した作品…とありました。騙されやすい単細胞のわたしは、素直に騙されることにして、迷子にはならないようていねいに読んでみました。異常な家族愛がもたらした同情の余地のない悲劇。最後に一番まともだと思っていた主人公?が迎えた結末は残念でしたが、彼は母親のしたことに感謝しているでしょうか。それとも、もう余計なことはしないでくれと思っているのでしょうか。樹海の暗い森の中で…。2018/09/04
うののささら
85
登場人物の話し方名前年齢で誤認させたり、劇中劇で時系列を変え誤認させたり折原一のトリックにすっかりはまりました。行方不明の息子の自伝をゴーストライターに書かせる。生まれてから不吉なことばかりおきる。都合の悪い人間が現れると始末してくれる異人。異人が過去から現在に自由に飛翔しているよう。小説の中の出来事が現実に作用しているような得体の知れない不気味さ。すべては思い込みの強さからくるトリックだった。とてもおもしろかったです。2022/04/26
hiro
83
電子書籍。本屋大賞の発掘部門でこの作品を知った。ミステリーのジャンルのなかでも叙述トリックが好きなのに「叙述トリックの名手」と呼ばれる折原一さんの作品を読むのは今回が初めて。叙述トリックの作品を読む前には毎回これとこれに注意しようと思って読み始めるが、今回もまんまと作者の術中にはまってしまった。「〇〇の館」という題名からは、密室殺人を絡めた作品かとも思ったが、地下室や富士の樹海が登場するサスペンス色が強く、昭和を感じさせる作品だった。特に後半は一気読みだったが、読み終えて改めて題名に納得した。2020/12/19